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サンバ・パウリスタの記憶 [ブラジル]

70年代のブームをきっかけにサンバを聴き始めた多くの日本人が、
サンバは黒人コミュニティから生まれたものと思い込んでいました。
もちろん、ぼくもそのひとりです。
簡単にいえば、サンバ=カーニバル=映画『黒いオルフェ』みたいな図式ですかね。
それが幻想にすぎないことに気付くためには、
もう少しブラジル音楽を理解するための時間が必要でした。
いまでは、サンバはリオの裏山から生まれたのではなく、
ドンガやピシンギーニャ、シニョーたちが創り出した
サロン・ミュージックだったということが広く知られています。

とはいえ、サンバが発展するのにコミュニティが大きな役割を果たしたこともまた、
紛れもない事実です。
70年代に、これぞ「ホンモノ」のサンバと夢中になって聞いていたのは、
カルトーラ、ネルソン・カヴァキーニョ、カンデイアといった、
マンゲイラやポルテイラなどのエスコーラ出身のサンビスタたちでした。
こうした伝統サンバの味を伝えるコミュニティのサンバの輝きは、
いまもなんら変わることはありません。
ただ受け手である私たちのサンバへの幻想が消え、
「ホンモノ」という形容には、ちょっと語弊があることに気付いたわけです。

こうしたコミュニティのサンバは商品化しにくい(=売れない)こともあり、
アルバム・リリースがままならないという現実がありますが、
マルクス・ペレイラや田中勝則さんの仕事以来ともいえる、
素晴らしいプロジェクトが進行しています。
それがこの“MEMÓRIA DO SAMBA PAULISTA”。
知られざるサンパウロのエスコーラやヴェーリャ・グァルダたちにスポットをあてたアルバムが、
現在のところ4枚リリースされており、CD番号をみると今後のリリースも期待できそうです。

SAM009-2.jpg SAM010-2.jpg
SAM011-2.JPG SAM012-2.jpg

若手のソフトなサンバなんかじゃガツンと来ない、ディープなサンバ好きの方はぜひ。

Embaixada Do Samba Paulistano "MEMÓRIA DO SAMBA PAULISTA" Sambatá/Tratore SAM009-2
Toniquinho Batuqueiro "MEMÓRIA DO SAMBA PAULISTA" Sambatá/Tratore SAM010-2
Tias Baianas Paulistas "MEMÓRIA DO SAMBA PAULISTA" Sambatá/Tratore SAM011-2
Velha Guarda Do G.R.C.E.S. Unidos Do Peruche "MEMÓRIA DO SAMBA PAULISTA" Sambatá/Tratore SAM012-2
コメント(2) 

コメント 2

いしだまさたか

>「ホンモノ」という形容には、ちょっと語弊がある
おおまじめに「本物」と書いてしまいました。「ディープな」ぐらいにしておけばよかったですね。ただ「サンバが発展するのにコミュニティが大きな役割を果たしたこと」という点は、多少過大評価ぎみにでも釘を刺しておいて、現在のホンモノのサンバはバイリ・ファンキだ、などと話を繋げたい誘惑は絶ちがたいです。困ったものです。
by いしだまさたか (2009-07-20 11:04) 

bunboni

現在のホンモノのサンバはバイリ・ファンキだというのは、現場を肌で知る石田さんだからこそ指摘できる、重要なポイントですね。
しかし、その今ヴィヴィッドな「ホンモノ」の音楽を好きになれないところが、ぼくは悲しいです。ブラジルのファンキに限った話ではなく、クドゥロやレッガーダといったジャンク・ミュージックからしかリアルな感触を得られないというのも、ずいぶん悲しい話です。単に、ぼくがじじぃになったからなのかもしれませんが。
by bunboni (2009-07-20 16:21) 

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