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忘れじのレコード屋さん その1 【ディスコマニア】 [レコード屋・CDショップ]

Sylvia De Grasse.JPG

ぼくがラテン音楽を聴き始めた1976年当時、
東京都内でラテンのレコードを買えるお店といえば、3軒しかありませんでした。
3軒とも忘れられない思い出がいっぱいありますが、
なかでも一番お世話になったのが、恵比寿のディスコマニアです。

通い始めの頃は中目黒駅裏のマンションにあって、
5年くらい経ってから、恵比寿のマンションに引っ越したんでしたっけ。
どちらもマンションの一室で、靴を脱いでスリッパに履き替えて上がるんです。
レコード屋に行くというより、知り合いの家に遊びに行くみたいな感じでしたね。

店主の永田さんは、上品な山の手のご婦人といった感じの方で、
専門店にありがちな押し付けがましさがまったくなく、
ラテン初心者のぼく相手に、とても親切に接してくれたことが忘れられません。
このお店のお客さんは中高年や老年のマニアばかりだったので、
ぼくのような十代のビギナーの客は珍しかったんだと思います。

当時ラテン音楽覚え始めだったこともあり、どれも欲しいレコードばかりで、
とてもお金が間に合わず、取りおきをお願いするのですが、
「あら、お代は今度でいいわよ。持ってらっしゃい」などと言われて、
ずいぶんツケで買ったのを覚えています。

ぼくもいろんなレコード屋に通いましたが、ツケで買っていたなんて、
後にも先にも、ここディスコマニアだけです。
バイト代が入るたびに、払いに行ったものですが、
「まだいいわよ。今度になさい」なんて言われたりして、
今思うに、どー考えてもちゃんと清算できていない気がするんですよね。(汗)

そんなこんなで、ディスコマニアで買ったものに、
アルセニオ・ロドリゲスの“QUINDEMBO”、セリア・クルースのシーコ盤、
アマリア・ロドリゲスのカフェ・ルーゾ・ライヴのボックスLP、
エリゼッチ・カルドーゾとジャコーの共演ライヴ第1~3集、
マリア・クレウザの“EU DISSE ADEUS”などなど、本当にたくさん買いました。

とりわけよく覚えているのが、
パナマの歌姫シルビア・デ・グラッセのマルベーラ盤を買ったときのこと。
永田さんはぼくがこのレコードを引き抜いたのをすごく喜んで、
「シルビアをご存知なの? 最近はこういう愛くるしい歌手っていなくなりましたものね。
あぁ、愛くるしいなんていっても、お若い方にはおわかりにならないかしら」
と嬉しそうにおっしゃったのが、いまでも脳裏に焼きついています。

シルビアのこのアルバムを聴くたび、あの時の永田さんを思い出すのです。

[LP] Sylvia De Grasse "COSA LINDA" Marvela LP38
コメント(7) 

コメント 7

☆諒

ディスコマニアは僕も行きました。
ディスコマニアで買ったビオレータ・パラのパリ・オランピア劇場でのリサイタルの二枚組ライブ盤と、スペインのアイドル歌手だったマリソルがパラグアイのトリオをバックにフォルクローレを歌ったアルバムは僕の宝物です。

1976年の3月で、NHK-FMの『ラテンタイム』の放送が終了しましたが、その少し前に永田さんから「『ラテンタイム』の放送が無くなるみたいですよ」と聞いていたので、もしかしたら永田さんは『ラテンタイム』のDJの一人だった音楽評論家の永田文夫さんの奥さんなのかな?…なんて思いました。確認した訳ではないので判りませんが。
by ☆諒 (2010-12-17 19:20) 

bunboni

はい。永田文夫さんの奥様だった方ですね。
by bunboni (2010-12-17 22:40) 

☆諒

やはり永田文夫さんの奥さんだったのですね。本当に親切な人でしたね。

恵比寿に移転した事は知りませんでした。

恵比寿と言えば、雑誌「中南米音楽」(現「ラティーナ」の前身)の編集部が恵比寿にあって、輸入盤レコードを買いに行った事がありました。
その時応対してくれたのが当時編集部員だった塩満百合子さんで、今ではパラグアイ政府から勲章も授与しているアルパ演奏の第一人者になってますね。
by ☆諒 (2010-12-19 18:22) 

南十字星☆

なつかしいお店です。1981年に故郷の松山に戻りました。
お店が恵比寿に移ったことは今日知りました。私はフラメンコギターを求めて随分と通わせていただきました。
もう30年くらい前のことです。永田さんはお元気でしょうか。
by 南十字星☆ (2011-02-17 20:00) 

olivos

なつかしいですね。
群馬県の工場に勤務していた頃、ほんの数える程しかない上京の目的は、このディスコマニア訪ねることでした。
「出来るだけ泥臭い感じのフラメンコのレコードを下さい」とお願いしたら、優しいおばさんがさり気なく選んでくれました。帰宅して聴いたら、自分の好みにぴったりで嬉しかったです。
谷川越二さんも度々来られるようなお話を聞きました。
「ラテンタイム」の後番組になるのでしょうか、日曜日朝のNHK-FMの谷川さんの「ラテン・中南米の旅」は、殆どカセットに録音してあります。
by olivos (2011-10-21 15:12) 

Borinquen

部屋の掃除をしていたらDISCO MANIAの袋とT-Shirtsが出てきました。私も色々とお世話になったお店でした。DISCO MANIA企画でN.Y.ツアーがあり、河村さん、藤田さんに同行して最初で最後のN.Y.で貴重な体験もできました。永田さんが永田文夫さんの奥様だったとは知りませんでした。貴重な情報ありがとうございました。
by Borinquen (2021-01-26 16:49) 

Pacheco

NMMでその存在を知ったDISCO MANIA,当時住んでいたところから歩いて15分ということもあって、NMMが煽ったSALSAの人生初の一枚目をここで購入。確か輸入盤紹介ページで知ったと思いますが”Macho Mumba / SAOCO”でした。あまりゴージャスなオルケスタっぽい感じではないのが、ロックやブルーズを聴いていた少年には逆にピッタリしたようで、それ以来salsaに首を突っ込むようになりました。NYC,San Juan,Habanaへと音楽の旅をすることになるとは夢にも思わず、今思えば入口を作ってくれた店でした。
by Pacheco (2022-02-16 14:57) 

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