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ようやく日本でも評価されたルネース・マトゥーブ [中東・マグレブ]

Sserhass Ayadu.JPG

Matoub Lounes "SSERHASS AYADU" Production Azwaw/EMI Music Arabia 0946-3-10995-2-6 (1988)

ここ数年アラブ・アンダルース音楽に注目が集まり、これまで日本では無視され続けてきた
ルネース・マトゥーブが急に評価されたのがウソみたいで、なんだかムズ痒い気分です。
いや、もちろん、とっても嬉しいんですよ。嬉しいんですけど、いままでがいままででしたからねー。

ライやアラブ歌謡を聴きこんでいるファンですら、ルネース・マトゥーブ? 誰それ?でしたから、ええ。
アラブ研究家で音楽に詳しい方でさえ、ルネース・マトゥーブを知らないと堂々と言っていたのが、
つい3年ぐらい前のことですからねえ。
ワールド・ミュージックのファンも案外保守的な人が多くて、ライを聴く人はライしか聴かないし、
アラブ歌謡ファンはアラブ歌謡だけみたいなところがあって、
カビール音楽なんてちょっとはずれたものは、誰も相手にしないみたいな。

そんなせいでマトゥーブのCDといえば、十年ぐらい前はワールド・コーナーで売れ残る定番商品で、
セール品に格下げされても、いつまでも残っている可哀想な姿を何度も目撃したもんでした。
あまりに不憫で、見つけるたびに救出してたんですが、
そんなんで拾い上げた97年作が再発され、昨年ビーンズから国内発売されたのは、
感慨深いというより、ムズ痒い気分になったというわけです。

そんな数多くのマトゥーブのCDの中でぼくが一番好きなのが、
アズワウというアルジェリアの弱小レーベルに残した88年のアルバム。
アズワウは、まだ十代のシェブ・ハレドが79年に電気化される前のアクースティックなライを
録音したレーベルとして知る人ぞ知るレーベルで、
そのシェブ・ハレドのアルバムと一緒にEMIアラビアがCD化しました。

マトゥーブが弾くマンドーラに、ナイ、ヴァイオリン、ダルブッカが絡みつく軽快なアンサンブルには、
アラブ・アンダルース音楽の伝統が色濃く残っていて、その奥行きのあるサウンドが魅力的です。
若々しいこぶしを聞かせるマトゥーブの歌声には、
カビール人のアイデンティティを体現してきたプロテスト・シンガーらしいカリスマ性があり、
ボブ・ディラン、ヴィソツキー、ボリス・ヴィアンに例えられるのも、むべなるかな。
こんなにわかりやすい音楽なのに、なんで生前にきちんと評価されなかったんでしょーねー、
としつこく恨み節。いくら評価されても亡くなってからでは、わだかまりが残ります。
せっかくなので、ぼくのお気に入りのマトゥーブのアルバムを最後に並べておきます。

Thissirth N'endama.JPGKenza.JPGLa Complainte De Ma Mere.JPGAu Nom De Tous Les Miens.JPG

Matoub Lounes "THISSIRTH N'ENDAMA" Blue Silver 50383-2 (1987)
Matoub Lounès "KENZA" Blue Silver 50583-2 (1994)
Lounes Matoub "LA COMPLAINTE DE MA MERE" Blue Silver 50514-2 (1996)
Matoub Lounes "AU NOM DE TOUS LES MIENS" Blue Silver 50617-2 (1997)
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