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生きている英国の寓話 エミリー・ポートマン [ブリテン諸島]

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イングランドから、すばらしい女性シンガーが誕生しました。
その人の名は、エミリー・ポートマン。
デビュー作“THE GLAMOURY”は、バラッドの流れを汲む
さまざまな寓話にもとづいた、12篇の短編集といった仕上がりとなっています。
1曲を除きすべて自作曲。どの曲もイングランドらしいメロディをたたえ、
妖精物語やお伽噺を今に伝えています。

エミリーの歌いぶりも過度な抑揚をつけず、そっけないくらいストレートに歌っています。
節回しよりもディクションに神経を配っているので、ことばが明快に伝わってきますね。
感情表現を抑えることで、歌の物語性がぐっと前に出てきて、
バラッド・シンギングのお手本とでもいうべき歌唱といえます。

絵本を読み聞かせするようなその歌は、曲ごと、それぞれ違った絵本を見開く新鮮さにあふれ、
アルバムの最後まで、耳が引き付けられっぱなしとなります。
その秘密は、エミリーの歌唱を盛り立てる伴奏のアレンジにあります。
チェロやヴィオラ、ハープなど弦の響きを巧みに配置し、1曲ごと趣向がよく凝らされています。
弦をはじくピッツィカートとエミリーの声が交じり合うと、清らかな空気が震え、
エミリーほか3人の女性歌手が螺旋のごとく絡み合う輪唱は、神秘のベールを纏うかのよう。
エミリーの清爽なシンギングは、天空へ立ち上る雲をイメージさせます。

森の中で出会った妖精に寓話を聞かされているような、そんな錯覚にも陥る44分17秒。
いかにもイングランドらしい感性を、
現代的なコンテンポラリー・フォークのサウンドの中に結実させた傑作です。

Emily Portman "THE GLAMOURY" Furrow FUR002 (2010)
コメント(4) 

コメント 4

Tadd

Devil's Interval のメンバーの女性ですね。さっそく購入します。
by Tadd (2010-04-12 09:13) 

bunboni

Devil's Interval というグループのメンバーだったんですか。
今ネットで調べてみたら、グループは発展的解消をしてソロ活動に転じたとありました。
それがこのデビュー作だったんですね。
by bunboni (2010-04-12 12:44) 

Tadd

Devil's Interval はWatersons や Coppers Family みたいなコーラスを聞かせる若手グループとして異彩を放ってたんですけど、今は3人それぞれの活動に専念しているみたいですね。
Jim Causley はソロ・アルバムも出しているし、Mawkin:Causly を率いて、今やUKフォーク若手世代の中心的人物の一人でしょう。


by Tadd (2010-04-13 09:55) 

bunboni

ぽっと出の新人とはとても思えませんでしたが、
やはりちゃんとキャリアを積んだ人だったんですね。
Jim Causley も噂は知れど未聴の人だったので、今度聴いてみます。
いろいろ教えていただき、ありがとうございます。
by bunboni (2010-04-13 12:31) 

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