マラッカ海峡を渡るガザル スリ・マハラニ・ガザル [東南アジア]
どんぶらこ、どんぶらこ。
波に揺れる舟を思わせる海洋性のリズムが耳残りします。
スリ・マハラニ・ガザルは、
マレイシアのジョホールで70年代に活躍した名門ガザル・グループ。
ハルモニウム、ガンブース、ヴァイオリン、ギター、マンドリン、ルバーナ、タブラ、
マラカスに男女の歌手が加わった標準的なガザル・グループの編成で、
魅惑の南海歌謡ともいうべきミクスチャー・ミュージックを聞かせてくれます。
マレイシアのガザルは、スワヒリ文化圏のターラブとも共通する、
海のシルクロードで結ばれた音楽。
船で渡った各地の音楽が交わって、
ミクスチャー・ミュージックならではのコクがたっぷりと詰まった、
音楽のカレーと呼ぶにふさわしい香りを、その響きの中に纏っています。
インド、ペルシャ、アラブ、ラテンなど多種多様な音楽がスパイスとなって練り込まれ、
その複雑な味わいは、食すれば食するほどやみつきとなり、忘れられない味となります。
作り手によって味がみんな違うってところが、これまたいいんですよねー。
だって、なんせ、カレーですから。
数あるマレイシアのガザル・グループの中でも、
スリ・マハラニ・ガザルがひときわ名高いのは、
ファルジ・アフマドがメンバーとして在籍していたからでしょう。
ジョホール州の港町ムアルに生まれたファジル・アフマドは、
マレイシアのガザル王とも称されたガンブースの名手。
軽量小型化した改良ガンブースを開発し、
ガンブースを立って弾けるようにした人としても有名です。
惜しくも06年に64歳で亡くなりましたが、マレイシア音楽史に残る一人です。
スリ・マハラニ・ガザルはLP11枚、EP14枚のほか、
大量のカセットを残したそうですが、
最近、復刻CDを4タイトル入手することができました。
(ちなみに“VOL.3”とEMI盤は曲順違いの同内容。
“VOL.3”は盤おこしなので、音のいいEMI盤がオススメです)
ぼくにとってこのグループの最大の魅力は、フィーチャーされている女性歌手の存在。
そのあけっぴろげで無遠慮な歌いぶりには強烈な大衆味があふれ、場末感が漂います。
お行儀のいい観光化された伝統ガザルも多いなか、この女性歌手の存在感は強烈です。
この臭みって、以前にも確か味わった覚えが…と思ったら、
ターラブの名盤『ニョタ』でした。
『ニョタ』には、ザンジバルのコミュニティで伝統保存された
鑑賞音楽のターラブとは大違いの、
タンザニアの港町タンガのナイトクラブで生み出された
大衆臭ぷんぷんのターラブが詰まっていました。
スリ・マハラニ・ガザルのガザルにも、
そんな南海エキゾ歌謡のスパイシーな香りが匂ってくるようです。
Sri Maharani Ghazal "VOL.1 : GAMBUS MUAR" Keluaran & Edaran INCD2004.029
Sri Maharani Ghazal "VOL.2 : MUAR" Keluaran & Edaran INCD2004.030
Sri Maharani Ghazal "VOL.3 : MUAR" Keluaran & Edaran INCD2004.031
Orkes Ghazal Sri Maharani "TUDUNG PERIUK" EMI 7243-539247-20
2010-05-12 06:13
コメント(3)
音楽の話題でなくて恐縮です。
さっき、何となくプロフィールを読ませて頂いたのですが、僕も荻原なんです。歳もほぼ同じで、出身は千葉市。僕はブルースなども聞きますが、ラテン系やアジア系、中近東や東欧の音楽も大好きです。
何となく同じDNAを共有している感じですね。
オギテツ
by ogitetsu (2010-05-12 11:10)
これは奇遇ですね。萩原は多いんですけど、荻原は少ないんですよねえ。
オギテツさんも、子供の頃からいつも人から萩原と言いまつがわれたりしませんでしたか?
以前仕事で2年間前橋にいた時、群馬県には荻原の名前が多いのが意外でしたけど、
群馬の場合は「おぎはら」なんですよね。
私は「おぎわら」なので、これまたびみょーにまつがった呼ばれ方をされていました。
あ、ちなみにぼくもブルースは好物です。特に戦前ものやピアノ・ブルースが。
by bunboni (2010-05-12 20:43)
はい、僕も<おぎわら>です。
父が長野の甲府の出なので、あの付近には荻原姓が多いですよね。
荻原という名前は、長野系と群馬系が有るようですね。
萩原は、本当に良く間違われました。ノギ編じゃなくて、ケモノ編だっつーに。
ちなみに、兄は和雄でして、なんかBunboniさんが他人には思えなかったです。
オギテツ
by ogitetsu (2010-05-12 21:18)