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もしわかってくれるのなら ホセー・アントニオ・メンデス

Jose Antonio Mendez.jpg

終わり行く夏の夜に、ホセー・アントニオ・メンデスが胸にしみます。
聴いているのはセカンド作の“JOSÉ ANTONIO MÉNDEZ”。
ピアノのアルペジオにエレキ・ギターが絡みつき、
ひと呼吸おいてリズムが奏でられると、
ホセーのなめらかな歌声がひそやかに流れ始める、
タイトル曲の「もしわかってくれるのなら」。

ホセーを聴いていると、素の自分に戻れますね。
妻の前ではだんなさんであり、子供たちの前ではおとうさんであり、
会社ではエラそうな肩書きがついて回るわけですけど、
そんなメンドくさい世俗のオトコ稼業から解放されるからです。
やせ我慢をする必要もなく、弱音を吐いたって大丈夫。
ひとりの弱いオトコのままでいられる、
そんな気分にさせてくれるのが、ホセーのフィーリンです。

中高年男性にとっての「心のヤドリギ」でしょうか。
いまや色恋には無縁となったオヤジにも、ひとつやふたつはある恋の古傷、
とうの昔に忘れていたはずのロマンティックな記憶を、
ホセーのフィーリンは鮮やかに蘇らせてくれます。
アルコールを嗜まないぼくでもホセーを聴いていると、つい涙腺がゆるむので、
夜中に一人で酒を傾けながら聴いていると、
ついつい深酒してしまうというみなさんのお気持ちは、よーくわかります。

ホセー・アントニオ・メンデスがメキシコRCA時代に残した5作のうち、
『フィーリンの誕生』のタイトルで日本盤も出た
1枚目の“CANTA SOLO PARA ENAMORADOS” に、
セカンド作の本作、“USTED… EL AMOR… Y JOSE ANTONIO MENDEZ”、
“EL MENSAJERO DEL AMOR…” の4枚を持っていますが、
ぼくはこのセカンド作が一番好きです。

ただ悔しいかな、ぼくが持っているのは、このセカンドだけがオリジナル盤でなく、
廉価盤レーベルのRCAカムデンから出た再発盤なんですよねえ。
オリジナル盤は、テーブルだけ明かりの灯った暗がりの部屋で、
ホセーが何か書きものをしているという雰囲気たっぷりのジャケット。
“USTED… EL AMOR…” の裏ジャケで知ってはいても、
現物LPにはいまだお目にかかったことがありません。

このセカンドこそ「ホセー・アントニオ・メンデスの最高傑作」とか、
「フィーリンの代表的名盤」と、つい口走りそうになりますけど、
このアルバムにそんな仰々しい言い方は、野暮なだけ。
ここはそっと、「オトコが泣ける格別の一枚」とだけ言っておきましょう。

[LP] José Antonio Méndez "JOSÉ ANTONIO MÉNDEZ" RCA Camden CAMS619
コメント(8) 

コメント 8

ケンジキエン

恐ろしくとろいレスですみません。いつも楽しくブログを拝見させていただいています。ホセ‐アントニオ、大好きです。出会いは例のごとく、エルスールのCD。しかしまあ、兄弟分のボサノヴァと比べてフィーリンで残された録音の何と少ないことよ。ホセ‐にしてもほとんど復刻されていないじゃないですか。せめてRCA録音だけでもちゃんと復刻されてほしいものです。それにしても、この哀愁感、オヤジにはたまりませんなあ。
by ケンジキエン (2010-10-19 22:13) 

bunboni

ありがとうございます。レス、いつでも歓迎ですよ。
フィーリン、ほんとに復刻進んでませんねぇ。
ボサ・ノーヴァの掘り尽し具合とは好対照ですね。
メキシコRCA録音なんて本気で掘り起こせば、CD3枚ぐらいで収まっちゃうと思うんですけど…。でもコンプリートでセッション別に並べてしまうと、オリジナル・アルバムの曲順の良さがなくなっちゃうかも。セカンドなんて、あの曲の並びが最高なので、ついそんな余計な心配をしてしまいます。
by bunboni (2010-10-19 22:34) 

ケンジキエン

ホセーなら数少ないながらとりあえずCDはあるし、Youtubeで動画もありますが、Cesar Portillo になるとほとんど何もありません。数年前にVirginから本人の自演+キューバの歌手たちによるカバーのCDが出ていましたが、彼自身のソロアルバムってあるんでしょうか?こんな素晴らしい音楽を埋もれるがままにしておくなんて、本当にもったいない。
by ケンジキエン (2010-10-20 21:23) 

bunboni

セサル・ポルティージョ・デ・ラ・ルスもいいですよねえ。
91年にハバナのホテルで行われた弾き語りライヴ盤
“UN MOMENTO CON PORTILLO DE LA LUZ”
(Pentagrama PCD193) は大好きなアルバムです。
ぼくのはメキシコ盤で、キューバ盤があるかどうかは不明です。
もう1枚“EL FEELING DE CESAR PORTILLO DE LA LUZ ”
(Egrem CD0426) もありますけど、これはぼくも持っていません。
by bunboni (2010-10-20 21:48) 

毎晩聴いてます。

オヤジさまではないですが、毎晩聴いて涙してます。
この前、壊れたラジカセに、CDを入れたまま、ラジカセを廃品業者に出してしまい、また買い直しました。それくらい好きです。
by 毎晩聴いてます。 (2013-03-17 17:19) 

bunboni

あぁ、なんてホセーにふさわしいエピソードでしょう。
気持ちのこもったコメント、ありがとうございます。
セサルをはじめ、知られざるフィーリンの復刻CDが続き、嬉しい悲鳴ですけど、
やはりホセーのこのアルバムが最高峰ですね。
心の襞に入ってきて、こんなに感情を揺さぶられるアルバムはめったにありません。
by bunboni (2013-03-17 19:18) 

kylyn

after youの更新をいつも楽しみにさせていただいているファンです。
私がafter youを愛読ブログの一番にしているのは、bunboniさんが本当に音楽を愛してらっしゃる気持ちがよく伝わってくるからです。このホセー・アントニオ・メンデスのレコードだって、のちにbunboniさんが見つけられたことで世界初CD化が実現したことは、ブログを愛読している皆さんなら全員がご存知のはずです。bunboniさんがそれを自慢したところでまったく不思議ではないと思うのですが、bunboniさんはそんな興味はまったくないようで、いかにも純粋な音楽ファンらしいbunboniさんのコメントを読むと、ああ、本当に音楽を愛されているんだなあと、なんだか嬉しくなってしまうのです。もちろんbunboniさんがポップ・アフリカ700というすごいご本を書かれた方であることは承知していますが、そんな偉い方というよりも近しく音楽を教えてくれる方という親しみをおぼえています(勝手に失礼なことをいってすみません)。
これからも素敵な音楽をたくさん教えてください。心から楽しみにしております。
by kylyn (2013-03-17 21:37) 

bunboni

いつもご愛読いただきありがとうございます。
過分なお言葉を頂戴して恐縮の次第です。
けっこう本人、自慢してるような気もするんですが(汗)、大丈夫か、自分。
え~、でも基本、私はただのミュージックホリックであります。
今後とも相変わらず、お気に入りとなった音楽を書き連ねていきますので、
よろしくお付き合いくださいませ。
by bunboni (2013-03-17 22:13) 

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