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クメール情緒を求めて イエン・シトゥル&オウチ・サヴィー

Sarikakeo.jpg

カンボジアへ旅行してきた方が買ってきたというCD。
カンボジアといえば、タイのルークトゥンも顔負けな原色使いのぎらぎらジャケットがお約束の、
クメール・ポップスが有名ですけど、このCDはぐっとシックなジャケット。
英語表記のみでクメール文字はどこにもなく、詳細な英文解説のライナーまで付いているので、
完全に国外マーケット用とわかります。

カンボジアの町なかのCDショップではなく、空港で売っていたというので、
観光客向けの伝統音楽CDかなと思ったら、たしかに前半はその通りなんですが、
後半はシン・シサモットのレパートリーを取り上げるというユニークなアルバム。
そのバラエティ豊かな内容ばかりでなく、
しっかりとプロデュースされたクオリティの高さにウナらされました。

男性歌手イエン・シトゥルはクメール音楽を伝承する著名な歌手とのこと。
プノンペンでクメール古典舞踏や民俗舞踏を教えるほか、WOMEXに出演したり、
イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどの海外公演もしているそうです。
女性歌手のオウチ・サヴィーはイエン・シトゥルの教え子だそうですが、
ぼくにとっては、コン・ナイのリアル・ワールド盤“MEKONG DELTA BLUES”(07)で相方を務め、
のびやかで美しい節回しを聞かせていたのが忘れられない人。
思いがけずこのCDで再会できたのは、嬉しかったですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-07-18

前半はイエンとオウチがソロやデュオで、
宮廷音楽や婚礼の音楽、伝統歌劇の劇中歌などを歌います。
ロニアット・エック(木琴)、トロー・チェー(胡弓)、クロイ(縦笛)など
伝統楽器によるアンサンブルも絢爛豪華で、これだけでも十分聴きものなのですが、
注目は先ほども言ったとおり、クメール・ポップスの帝王ともいえる国民的歌手、
シン・シサモットのレパートリーを取り上げた後半の4曲。
最近のクメール・ポップスのような打ち込みサウンドではなく、
ギター、ベース、キーボード、ドラムスに、カンボジアの伝統楽器を加えた折衷スタイルで、
クメール情緒あふれる哀愁味をたっぷりと楽しむことができます。
二人がデュオで歌ったラスト・ナンバーでは、細やかな男女の情が通い合う
こぶし回しの美しさに、胸をきゅっとつかまれました。

60年代まではクメール・ポップスでも伝統楽器が使われ、
クメール音楽と西洋ポップスのミクスチャーが自然に行われていましたが、
70年代に入ると急激に西洋化し、いわゆるガレージ歌謡なロック・サウンドへと変貌。
クメール情緒などどこへやらの、<はいからはくち>ポップスだらけになってしまいました。

このCDを制作したカンボジア・リヴィング・アーツは、
ポル・ポト時代をサヴァイヴした伝統音楽の名人たちを支援し、
クメール伝統音楽を若い世代へ継承する目的で設立された教育機関とのこと。
西洋化一辺倒に傾きすぎたポップスの世界にも、こんな試みが刺激となって、
カンボジアらしさを取り戻すきっかけになってくれればと、淡い期待を持ちたくなります。

Ieng Sithul and Ouch Savy "SARIKAKEO" Cambodia Living Arts no number (2008)
コメント(6) 

コメント 6

raidaisuki

bunboniさま

アルジェリア専門のraidaisukiです。覚えておられますでしょうか?

いま縁あってカンボジア・ポップ探索をしております。
現地ではCDショップも激減しており、面白い音楽に出会うことができず、失望しかけておりましたが、こんな活動もあったのですね。勉強になりました。

また60年代までのクメール・ポップスのあり方というのも全く知りませんでした。お恥ずかしい限りです。

いろいろご教示いただけましたら幸いです。

by raidaisuki (2010-11-10 21:17) 

bunboni

先生がちょうどカンボジアへ行かれていたのと同じ時期にカンボジアへ行ってらした方が買ってきたCDで、今でも愛聴してます。
現在のクメール・ポップはRasmey Hang Meas Production などのレーベルが活発にリリースしていますけど、どれもサウンドが金太郎飴で飽きてしまいます。

以前、60~70年代のクメール・ポップスを話題にした記事があります。
(大した内容じゃないんですが、ジャケットを楽しんでいただければ…)
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-11-21

ところで、話は変わってしまいますが、夜噺の時にかけられたKader Japoni のCDって入手できないものでしょうか。とても気に入ったんで、欲しいと思っているんですが、見つかりません。
by bunboni (2010-11-10 21:40) 

raidaisuki

さっそくのお返事まことにありがとうございます。

カンボジアに行っていた方って、あの、クワトロ関係の・・・ さんですよね?

たしかにHang Measってよく見ますね。でもやっぱりLiving Artsを掘り下げたいですね。
60~70年代についても勉強させていただきます。

Kader Japonai、興味持たれましたか。やっぱり「今」旬のアーチストというのは強い印象を与えるんですね。

FNACのサイトに2つほどソロがでてます。またKader JaponaiとかJaponaisとか(Japouniもあるかなあ)のつづりでも検索してみてはいかがでしょうか。綴りは適当に揺れ動きます。
まあ彼の人気はアルジェリア人コミュニティ内輪に限られるものですから、国際マーケットにはあまり出てないと思います。


by raidaisuki (2010-11-11 10:06) 

bunboni

カンボジアへ行かれてたのはお察しの方です。

FNACは最近CDをぜんぜん置いてなくて、
文房具やさんになりつつあるという噂も聞こえてきてますが、
検索したらたしかにありました。これからオーダーしようと思います。
ありがとうございました。
by bunboni (2010-11-11 21:34) 

raidaisuki

お役にたてましてなによりです。FNACもそんなんですか。
送料が高いので、そんないつも買わないですけど、時代は変わって行きますね・・・

今度パリにいったら、バルベスのカセット=CD屋が全部消えているのでは、という恐怖があります。
by raidaisuki (2010-11-16 20:07) 

bunboni

FNACに2タイトルあったので、両方オーダーしてみました。ジャケ写が載っていないので、どちらが夜噺の時のものかはわからないのですが、届くのが楽しみです。ご教示いただき、ありがとうございました。
FNACは送料がべらぼうに高いので、めったにオーダーしないのですが、それほどでもなかったですね。ユーロ安も効いているようです。
by bunboni (2010-11-16 21:04) 

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