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剛毅なフジを求めて アバス・アカンデ・オベセレ [西アフリカ]

Abass Akande Obesere_Ologbojo.jpg

ナイジェリアのフジが90年代以降、魅力を失った原因のひとつは、
パーカッション・ミュージックのサウンド・アイデンティティをかなぐり捨てたことでした。
シキル・アインデ・バリスターがパーカッションのみの演奏だったフジに、
西洋楽器を導入し始めたのが82年あたり。
はじめはアルバムのごく一部で、トランペット(軍隊ラッパ)やハーモニカなどを
ほんのアクセント程度、実験的に使うだけだったのが、
次第にスティール・ギターやシンセサイザーなどを派手に使い始め、
91年にインターナショナル・デビューしたイギリス・グローブスタイル盤では、
ジュジュを意識したハッタリ十分なスティール・ギターの大活躍ぶりに、鼻白んだものでした。

グローブスタイル盤でフジを初めて知った多くの人にとっては、
ぼくとはぜんぜん違う感想をお持ちだと思いますけども、
あの当時ぼくはすでにシキルを見限っていて、西洋楽器の導入を頑なに拒んでいた
ワシウ・アインデ・バリスター(当時)の方を、断固支持していました。
なので、シキルのグローブスタイル盤でフジが世界に紹介されたのは、
片腹痛い思いがしたものです。
しかし、ワシウも世の流行には逆らえず、
その後まもなく西洋楽器を取り入れるようになってしまいます。

70年代のフジは、どす黒いパーカッション・アンサンブルが地を這うヘヴィーなサウンドだったのが、
やがてスティール・ギターやシンセのちゃらい音が支配する軽いサウンドへとシフトし、
猛烈に疾走する早いリズムへと変わっていったのが、80年代から90年代にかけての変化でした。
そして世紀を越えたあたりからは、ついに女性コーラスまで加わるようになり、
硬派のマッチョな音楽だったフジは、ここに来て完全にナンパな音楽へと成り下がります。

Obesere VCD.JPG思えばこの道は、いつか来た道。
エディ・サンティアゴだのウィリー・ゴンザレスだのが、
男前だったサルサをサルサ・エロチカへと堕落させたように、
フジを大甘にした立役者のひとりが
アバス・アカンデ・オベセレでした。

オベセレはセックスを歌ったエロ路線で人気沸騰となり、
ストリッパーが登場する成人指定VCDまで乱発。
ぼくはその下卑たエロ路線まっしぐらのオベセレの諸作に、
ヘキエキとしてました。
(参考までにいっちばん下品なVCDがこれ。中身はほとんどノリウッド・ポルノです。
裏ジャケはさらに過激でお見せできません。サイテーです)

オベセレの歌唱力はいわば関脇クラスで、シキルやワシウに比べればかなり小粒。
演奏はといえば、サックスや鍵盤楽器がチープな音をまき散らし、
疾走するパーカッション・アンサンブルも一本調子で、ガサツさが否めず、
かつてのフジのパーカッション・アンサンブルのリッチで緻密な構成を知る者には、
とても満足できるものではありませんでした。
とはいえ、なかには息もつかせぬ強烈な疾走感で圧倒する良作も残していて、
04年の“OLD SKOOL LAPEL” は、オベセレの代表作の名にふさわしいものでした。
それでも個人的には、女性コーラスがジャマでしょうがなかったですけどね。

オベセレに限らず、アデワレ・アユバ、ワシウ・アラビ・パスマ、サヒード・オスパ、レミ・アルコなど、
近年のフジ・アーティストはやたらとアルバムを乱発するんですけど、
いくら追っかけても石ばっか、という感じで、玉に当たるのは10にひとつあるかないかといった程度。
女性コーラスがおジャマ虫なもの、ヤスッぽいシンセがショボいもの、リズムが一本調子なものと、
1枚の良作見つけるまでに10枚以上の駄盤が積み上がるという、
ボリウッド・サントラ並の低率ぶり。

これが今のフジ・シーンの実態で、
昔惚れ込んだ弱みがなけりゃ、とっくに見限っているジャンルなんですが、
ハズレを引いてる数が多いだけ、当たりにうまいこと出くわすとゾクゾクしちゃいますね。
そして、その数少ない当たりと自信を持って紹介できるのが、
オベセレの30作目を数える08年作の“OLOGBOJO” で、
拙著『ポップ・アフリカ700』にも載せてあります。

オベセレのアルバムでいつも耳障りだった女性コーラスがやっといなくなり、お囃しは男声のみ。
サックスや鍵盤楽器も、イントロや曲のつなぎなど、場面展開のみの控えめな使用となっていて、
力まかせにツッ走るだけではない抑えの利いたアンサンブルや、
コーラスとのかけあいも、これまでにないゆとりを感じさせます。
名義に新しくPK1st とあるとおり、「パラマウント・キング」の称号をいただき、
オベセレもようやくセックス路線からの転換を図っているのかもしれません。
エル・スールに最近また入ってきているようなので、この機会にぜひどうぞ。

Abass Akande Obesere "OLOGBOJO" Zee Entertainment ZEE002 (2008)
[VCD] Abass Akande Obesere "GOGO IN LONDON" Afeezco Films International no number
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