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CDの山の中から シェバ・ヤミナ [中東・マグレブ]

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初めて知ったばかりのジャンルというのは、音源もさることながら、情報も少ない方がいいですね。
その方が、もっと聴いてみたい、もっと知りたいという好奇心もかきたてられるし、
音盤を探し出す楽しみや、その音楽の全体像が序々にわかっていく面白さも増すというものです。
効率良く名盤100選を買ったからといったって、
その音楽と深い付き合いができるわけじゃないもんね。
暗中模索の中、時間をかけながら、ひとつひとつ謎を解き明かしていくように
ゆっくり付き合っていくことが、その音楽を深く理解することにもつながり、聴く愉しみも深まります。

そんなことをふと思ったのは、
スタイフィの女性歌手シェバ・ヤミナの中古CDを手に入れたことがきっかけ。
アルジェリア北東部オレス山脈周辺に暮らす、ベルベル系のシャウイ人の伝統音楽が
ポップス化した音楽スタイフィは、3年くらい前から日本でも知られるようになりました。
スタイフィの登場は、ちょうど四半世紀前にシェブ・ハレドやシェブ・マミなどの現地カセットが
LP化・CD化され始めたポップ・ライ登場時を思い起こさせ、
同じような体験ができるのではと、ワクワクしたものでした。

ところがネットで探索した途端、スタイフィの専門サイトには、
見たことも聞いたこともない歌手たちが、ずらーーーーーっと並んでいて、ただただ呆然。
どのCDの表紙も、ど・アップの顔写真が暑苦しくも並ぶ、強烈に場末感の漂うもので、
カタログを眺めただけでおなかイッパイになってしまいました。
結局、スタイフィの帝王と称されるシェブ・ハラスのほか3・4枚買っただけで、
それ以上追っかける気力を失ってしまったのでした。

低予算のへっぽこプロダクションであることは、
表紙からも十分想像がつくし、それはそれで構わないんですけど、
カタログがこんなに膨大では、さすがに飛び込む気力も萎えてしまいます。
そしてスタイフィという名前も忘れかけていた今日この頃、
偶然ワン・コインの中古で見つけたのが、このシェバ・ヤミナだったのですが、
これまで買った数少ないスタイフィのCDの中では、一番のお気に入りとなりました。

臭みのある声とパンチの効いたヴォーカルは、いかにもローカルなシンガーらしく、
ヴォーカルにハーモナイザーをかけたロボ声が登場しないところも好感が持てます。
生音のベンディールとガスバが活躍する、アゲアゲなダンサブルなトラックが満載で、
これぞスタイフィ100%みたいなアルバムとなっています。
1曲だけシンセと打ち込みによるライぽい曲もありますけど、
ほかはすべて、ヴァリエーション豊かな伝統リズムを生かしたハードボイルドな内容。
ガスバが篠笛みたいに聞こえる曲があるかと思えば、
シャウイの伝統音楽そのまんまの、ズルナがフィーチャーされた曲もあって、
ダブル・リードのビリビリいうノイジーなサウンドに脳天がシビれました。

こういう当たりが見つかると、もう少しスタイフィを掘ってみようかという意欲も出ますけど、
ワン・コイン程度で買えるならねぇ、というのがホンネでしょうか。
マルセイユのCD屋にでもいけば、そのぐらいの値段で、試聴もしながら買えるんでしょうけど、
海外旅行するヒマも金もない私には、いかんともしがたいですね(泣)。

ところで、ぼくもスタイフィとの出会いを通して、
音楽を聴かない、CDを買わない今の若い子たちの気持ちが、少しわかったような気がしました。
たしかに洪水のような情報の前には、好奇心の芽なんて、出ようがないかもしれませんねえ。
情報の乏しい音源を手探りで触れてきたぼくら世代の音楽ファンは、
ずいぶん遠回りもしましたけど、その効率の悪さや時間がかかったぶん、
聴く愉しみをたっぷりと味わえて、幸せだったのかもしれません。

Cheba Yamina "CHEBA YAMINA" Edition Boualem EBM178
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