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アルバータ・ハンターの戦前録音 [北アメリカ]

Alberta Hunter.JPG

クラシック・ブルースで好きな歌手のひとりに、アルバータ・ハンターがいます。
20年代から50年代までニュー・ヨークで活躍した人ですが、
77年に82歳でカムバックして出した“REMEMBER MY NAME” で大きな話題を呼び、
多くの音楽ファンに知られるようになりました。
カムバック後のしわがれ声で歌うアルバータも、
人生の荒波を越えて生きてきた女性ならではの、力強さや明るさが感動的なんですけど、
やはり聴くべきは、アルバータがもっとも脂ののっていた戦前録音でしょう。

ぼくが愛聴しているのは、30年代録音を中心に編集したドキュメント盤の第4集です。
1曲目がファッツ・ウォーラーのオルガンをバックに歌う“Sugar” というところが嬉しいんですよね。
“Sugar” といえば、リー・ワイリーの名唱がなんといっても最高ですけど、
アルバータが歌うこのヴァージョンもまろやかなスウィートさがあって、
これがまたね~、いいんですよぉ~。

30年代はアルバータが一番円熟していた時期で、
本CDには、キッパリとタフに歌い放つパンチの利いたブルースもあれば、
妖艶に歌うナンバーもあったりと、さまざまな表情を見せる歌いぶりが魅力となっています。
アルバータの歌唱は、キャバレー・スタイルともいえるヴォードヴィル風味の強い、
典型的なクラシック・ブルースのスタイルが基本といえますが、
ピアノのみの伴奏で歌う曲では、他のクラシック・ブルース・シンガーからは得られない、
繊細な歌いぶりを聞かせたりと、表現力に幅があるところがアルバータの強みです。

貧しい少女時代を送り、生活の糧として歌手になったアルバータですが、
1927年にはヨーロッパ・ツアーの一員として参加し、
パリやロンドンで歌うチャンスにも恵まれています。
ヨーロッパでは、人種差別のアメリカでは到底考えられない、
音楽家としての敬意のこもった歓待を受けて感動したことを、のちに彼女は語っています。

54年の母親の死を契機にアルバータは音楽活動をやめ、看護士として第二の人生を送ります。
勤めていた病院を定年でリタイアしたあと、昔取った杵柄で音楽界にカムバックし、
一躍脚光を浴びたわけですが、幸せな晩年を送れたのではないでしょうか。
84年にニュー・ヨークの自宅で眠るように息を引き取ったのは、89歳のことでした。

Alberta Hunter "COMPLETE RECORDED WORKS IN CHRONOLOGICAL ORDER VOLUME 4 1927-1946" Document DOCD5425
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