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ジャイポンガンは生きている ララス・ケンチャナ [東南アジア]

Jaipongan Abadi.JPG

ひさしぶりに聴くジャイポンガンの新作。
ジャイポンガンに夢中になったのは、ダンドゥットをはじめ、
インドネシアの音楽が大きなうねりとなって日本に紹介されるようになった、
80年代半ばのことです。
エレキ・ギターやドラムスを取り入れたダンドゥットに対し、
小編成のガムランとパーカッションによるジャイポンガンの伝統的な演奏は、
当時ナイジェリア音楽漬けだったぼくにとって、
ダンドゥットはジュジュで、ジャイポンガンはフジのように映りました。

ラマダーンの目覚まし音楽だったウェレという音楽から、
シキル・アインデ・バリスターが60年代後半にフジを創り出したように、
大衆芸能のクトゥック・ティルをもとに、
ググム・グンビーラが70年代前半にジャイポンガンを創り出したという生い立ちも似ていれば、
どちらも西洋楽器が入らず、伝統楽器だけで演奏されるところも同じでしたからね。

デデド率いるララス・ケンチャナというこのグループは、クンダンのビートを強調した、
イキのいいジャイポンガンを聞かせてくれ、
フィーチャーされるシンデン(ジャイポンガンの女性歌手)たちも、
ノドの強さやキレのある歌いぶりにキャリアを感じさせる、実力者揃い。
小編成のガムランに絡むルバーブやタロンペット(チャルメラ)のねっとりとしたフレーズも悩ましく、
スローな歌のパートと、クンダンが激しいビートで煽るパートの落差の大きな場面変化に、
ジャイポンガンならではの醍醐味をたっぷりと味わえます。

Innovative Jaipong_GNP.JPG   Innovative Jaipong_Rice.JPG

90年代に入ると、ジャイポンガンの急激なブームは去り、ぱったりと録音が途絶えてしまいますが、
06年にバンドゥンの若者たちが一念発起、ジャイポンガンを復活させました。
その作品が『革新的ジャイポン』。日本でも2年遅れでリリースされましたが、
タイトルどおり、目の覚めるような「革新的」なアイディアに溢れた名作です。
ポップ・スンダのスタイルを借りた曲で、3人のシンデンにハーモニー・コーラスをとらせるかと思えば、
クンダンのビートをさらに研ぎ澄まし、現代的なリズム処理をすることで、伝統を強化させるなど、
80年代のジャイポンガンをさらに進化させたサウンドに、感激したものです。

西ジャワのスンダ地方というローカルに還ったジャイポンガンが、
若者たちの手によって、いまも逞しく息づいているのは、頼もしく思います。
もう大ブレイクなんかしなくていいから、これからもコンスタントに便りを聞かせてください。

L.S. Laras Kencana "JAIPONG ABADI" Harika HCD261 (2008)
"INNOVATIVE JAIPONG" CMN/GNP CMNK111 (2006)
「ロボット・パーカッション/イノファティフ・ジャイポン」 ライス GNR810 (2008)
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akibyon

1990年ごろにバリ島を旅行した時にカセットテープ屋で「バリのテクノをください」って言って勧めてもらったテープがとても気に入りました。
今はパソコンに取り込んであって、カセットは無くしてしまったのですが、シャッフルでたまにかかるたびにどういう存在なのか気になって曲名と「Tecno SUNDA」というアルバムタイトルだけで調べていたのですが、ようやくこちらのブログの記事にたどり着きました。
YouTubeには同じ曲名でいろいろな人がやっており、アレンジも違い、作られた年代も違いそうなのでどういうことなのかさっぱりわからなかったのですが、少し理解できたような気がしました。
by akibyon (2017-11-24 01:02) 

bunboni

90年ごろというと、このアルバム以前のまさしくジャイポンガン全盛期の実験精神旺盛で、いろいろな試みをしていた時期の録音でしょうね。「テクノうんぬん」については、インドネシア人特有のネーミングの妙だと思いますけれど、なんでもありな音楽的な想像力逞しい、まさに大衆音楽が躍動している時期の貴重な録音なのではないでしょうか。
by bunboni (2017-11-25 20:29) 

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