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ザディコの光と影 アメデ・アルドワン

Amede Ardoin.JPG

最近またザ・バンドの『南十字星』を、よく聴き返しています。
「生涯の友」と呼びたいこのアルバムは、もう何百回聴いたかわかりませんけれど、
何度聴いても胸を締め付けられるのが、「アケイディアの流木」です。
この曲の背景を知りたくて、18世紀半ばのフレンチ・インディアン戦争のことを調べたり、
ケイジャンに興味を持つようになったのは高校三年のことだから、大昔の話ですね。

ケイジャンやザディコの奥の細道へと分け入り、
ザディコのロバート・ジョンソンともいうべきアメデ・アルドワンと出会った時は、
「アケイディアの流木」のルーツに、ようやく辿り着いたような気がしたものです。

「アケイディアの流木」は、オハイオ川流域の領有権をめぐって英仏が争った、
フレンチ・インディアン戦争が舞台となっています。
フランスの植民地だったカナダのアカディア地方から強制的に追放された、
フランス系住民アカディア人の物語が、歌のテーマですね。
ちなみにフランス語では「アカディア」と発音しますから、「アケイディア」という呼び名は、
フランスを追い出したイギリス側のまなざしということになります。
アメリカのルイジアナに移り住んだアカディア人は、独自のケイジャン文化を育み、
黒人と白人の交流によって、クレオール音楽のザディコを生み出しました。

記念すべきザディコの初録音となった、黒人アコーディオン奏者アメデ・アルドワンと、
ケイジャン・フィドルの白人パイオニア、デニス・マッギーのコンビによる29年の6曲を聴くと、
「アケイディアの流木」のメロディーが、いまだ写し絵のように頭の中に巡ります。
このレコーディングは、コロンビア・レコードがブラインド・ウィリー・ジョンスンの出張録音のため、
ニュー・オーリンズにやってきた折に残されたもので、
はじめてその事実を知った時は、ブルース・ファンとしても感慨深く思ったものです。

アメデ・アルドワンはこの29年の初録音後、翌30年にブランズウィックへ10曲録音し、
大恐慌を隔て、34年8月ブルーバードに6曲録音、同年末にはニュー・ヨークのデッカに呼ばれ、
アメデ一人で12曲を録音し、生涯に34曲を残しました。
これまでアメデのCDといえば、26曲収録のアーフリー盤が有名でしたけれど、
今回新たに、全34曲を2枚のディスクに収めたリイシューCDがお目見えしました。
曲順が録音順ではなく、アトランダムなのが玉にキズですけど、
新装版で再発されたロバート・ジョンソンの2枚組と肩を並べる、アメリカ音楽の歴史的名盤です。

白人農園主のダンス・パーティーで人気者だったというアメデの華麗なアコーディオン・プレイは、
人種差別の激しかった深南部においては、きっと嫉妬と羨望の的であったことでしょう。
白人男性のリンチにあって精神を破壊され、以後は悲惨な生涯を送ったという説や、
その他にもアメデの死については諸説があり、謎に包まれたままという人物像が、
ロバート・ジョンソンをホーフツとさせます。

そんな光と影の強さゆえ、アメデ・アルドワンのザディコは、
いまなおナマナマしい響きを失わないのでしょう。

Amede Ardoin "MAMA, I’LL BE LONG GONE : THE COMPLETE RECORDINGS OF AMEDE ARDOIN 1929-1934" Tompkins Square TSQ2554
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