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日本の夏、ハワイアンの夏 バーニー・アイザックス [太平洋・オセアニア]

HAWAII INSTRUMENTALLY YOURS.JPG

ビア・ガーデンやプール・サイドに流れる、甘ったるいスティール・ギターの調べ。
マヒ・ビーマーやギャビー・パヒヌイが知られるようになってからは、
そんな凡庸な観光ハワイアンなど、まともに語られることもなくなりましたけど、
コマーシャルとバカにされるハワイアンでも、お気に入りのアルバムがあります。

ワイキキのお土産やで売ってる絵葉書を並べた、いかにもノヴェルティなこのジャケット、
サブ・タイトルもずばり「バックグラウンド・ミュージック」と、まさしく観光客ネライのつくり。
裏ジャケットもハワイの観光名所の写真と説明が並ぶだけで、
演奏者の名前はジャケットのどこにも書かれていません。

高校2年のサマー・スクールでオアフ島に滞在した75年の夏、
典型的なハワイアンも買っておこうと思い、何枚かみつくろったなかで、
ずっと手放さずに残ったのが、このアルバムでした。
1ドル99セントだったか、たしかそんなタダ同然みたいな値段で売っていたレコードなので、
まったく期待もせずに買ったことを覚えています。

ところが中身は、スティール・ギター、ヴィブラフォン、ウクレレ、ベースで、
チャールズ・エドワード・キング、ジョン・アルメイダ、レナ・マシャードなどの
古いハワイアン・スタンダードを淡々と演奏した、とびきりの内容のアルバムだったのです。

のちにわかったことですけど、このアルバムを演奏しているのは、
人気ラジオ番組「ハワイ・コールズ」で演奏を務めた名スティール・ギター奏者の
バーニー・アイザックス率いるワイキキ・セレネーダーズでした。
このアルバムはバーニーが音楽監督を務めていたワイキキ・レコードの、
50年代の代表作でもあったそうです。
バーニーは、名門ロイヤル・ハワイアン・ホテルのバンドリーダーを務めた、
父アーヴィン・アイザックスの長男で、次男は名ベーシストのノーマン、
三男はスラック・キー・ギタリストのアッタという、音楽一家でした。

驚いたのは、90年代に入ってからこのアルバムがCD化されたことです。
50年代のLPが75年でも買えたほどのロング・セラー・アルバムだったのだから、
もちろんCD化されても不思議はないわけですが、
それならバーニ・アイザックスの名前くらい、ちゃんと載せればいいものを、
LPジャケットの表裏を複製しただけで、解説の一文もなしの手抜きCDなのでした。

Barney Isaacs & George Kuo HAWAIIAN TOUCH.JPG

その後バーニーは、スラック・キー・ギタリストのジョージ・クオと
素晴らしいデュオ・アルバムを、95年になってリリースします。
スラック・キー・ギターのレーベル、ダンシング・キャットの数あるカタログの中でも、
これは屈指の名盤といえる内容でした。
バーニーはエレクトリックのラップ・スティールではなく、
アクースティックのリゾネイト・ギターを演奏していて、
生音の優しい響きがとびっきりスウィートなアルバムに仕上がっていました。
バーニーがアクースティックで録音したのは、なんとこれが初だったとのことです。

バーニーはこのアルバムを出した翌年96年に亡くなってしまいましたが、
最期に円熟の極みともいえる名作を残してくれたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

Waikiki Serenaders "HAWAII INSTRUMENTALLY YOURS" Waikiki WCD306
Barney Isaacs & George Kuo "HAWAIIAN TOUCH" Dancing Cat 08022-38026-2 (1995)
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