サンバの警察官 カンデイア [ブラジル]
生涯を通してアフロ・ルーツのサンバにこだわり続けたカンデイア。
彼の70年のソロ・デビューから75年の最高傑作までの3作が、
リマスターされてリイシューされました。またもジスコベルタスのお仕事です。
ボーナス・トラックなしのストレイト・リイシューが残念ですけど、
15年くらい前にCD化された際は、タイトルやジャケットが変更されていたので、
オリジナル・ジャケットを忠実に復刻してくれたのが嬉しいですね。
上の写真の左側がジスコベルタスが今回復刻したCD、右側が以前のCDです。
サンバがリヴァイバルした70年代に、
もっともアフロ色の濃い伝統サンバを歌っていたのが、カンデイアでした。
すばらしいパルチード・アルトを披露した、
パルチード・エン・シンコの第1・2集も忘れられませんが、
アフロ・ブラジル文化を体現したサンバの詰まった75年のタペカール盤が、
やはりカンデイアの代表作でしょう。
ビリンバウを加えたバイーアのカンドンブレの師匠カマフェウ・ジ・オショーシに捧げた作品ほか、
伝統サンバのセッション、ローダ・ジ・サンバの真髄を、
これでもかとばかりに見せつけてくれます。
ローダ・ジ・サンバをひっくり返し、『サンバ・ジ・ローダ』としたタイトルにも、
サンビスタの心意気を感じさせますね。
今回ひさしぶりにデビュー作とセカンドを聴き直して、
カンデイアが書く曲のメロウな抒情味にもグッときました。
ポルテーラでカンデイアが発表してきたサンバを披露しているんですけど、
漆黒のアフロ成分にとろっとした甘みが滲み、若々しいカンデイアの声とともに、
格別の味わいを醸し出しています。
特にセカンドは、アジムスのジョゼ・ベルトラミのオルガンがいいアクセントとなっていて、
バテリアが炸裂する圧巻のオープニング“Filospfia Do Samba” から、
メロディー・メイカーとしての才が光るラストの“Regresso” まで、一気に聞かせます。
カンデイアは、若い時に一時警察に入り、不幸にも銃弾を受け、
その後遺症で、残り半生を車椅子で送りました。
商業主義へ傾くエスコーラに反発して、15歳から所属していたポルテーラをやめ、
黒人意識の高揚を図るべく新たなエスコーラ、キロンボを75年に立ち上げたのも、
カンデイアがサンバの伝統を護る警察官だったことの表れなのではないでしょうか。
Candeia "CANDEIA" Equipe/Discobertas DB079 (1970)
Candeia "SAMBA DA ANTIGA" Novo Esquema 99814 (1970)
Candeia "SEGUINTE...RAIZ" Equipe/Discobertas DB080 (1971)
Candeia "PHILOSOFIA DO SAMBA" Novo Esquema 99812 (1971)
Candeia "SAMBA DE RODA" Tapecar/Discobertas DB081 (1975)
Candeia "SAMBA DE RODA" Tapecar 99115 (1975)
2011-08-25 00:00
コメント(2)
実はbunboniさんこれをいつ紹介してくれるのかなと楽しみにしてました。この間偶然レコード屋で見かけてすぐに買いました。30年ほど前にクアトロ・グランジスで初めて知り、パルチード・エン・5と3作目は持っていましたが、今回初めて1,2作目を聴いて改めてカンデイアの素晴らしさを実感しました。それにしても当時のトリオ、RCA、ポリドールはじめ日本のレコード会社はいい仕事してたと思います。まだまだ入手困難なレコードが沢山あったとは言え、こんなレコードが日本盤で普通に買えたんですから。確かクアトロ・グランジスは学生生協で買った記憶があります。
by Niam niam (2011-08-25 15:47)
お待たせしました(^^ゞ なんちて。
そんなふうにおっしゃっていただけると、うれしいです。
70年代にサンバと出会えた日本人は本当に幸せだったと思います。
80年代末にデヴィッド・バーンがブラジル音楽とか言い出したとき、
いまごろ何言ってんだ?と思いましたもんね。
by bunboni (2011-08-25 22:23)