小娘モーラム カーオティップ・ティダーディン [東南アジア]
ひさしぶりに楽しいポップ・モーラム・アルバムと出会えました。
新人女性歌手カーオティップ・ティダーディンのデビュー作。
タイ最大手レーベルのグラミーが制作すると、
ポップ・モーラムもここまでかっこよくなるという見本ですね。
オープニングのタイトル曲「小娘モーラム」は、
スクラッチやラップも交えたファンク仕立てのポップ・モーラム。
タイ東北部イサーンの芸能のモーラムがここまで都会的になるってのも、面白いじゃないですか。
モーラムの味わいなんか、どこにもないじゃないか、とお怒りのムキもあるかもしれませんが、
地方の民俗芸能モーラムから中央の田園歌謡ルークトゥンに変質して、
タイ全国区ポップスに変貌したこのアルバムの仕上がり、ぼくは支持します。
ヒップ・ホップばかりでなく、レディー・ガガを意識した2曲目など、欧米の流行を取り入れる一方で、
ケーンの響きが故郷を偲ばせる田園歌謡調のバラードや、
ソーをフィーチャーしたカントゥルムを歌うなど、
イサーンに軸足をしっかりと置いている安定感があって、流行に足をすくわれた印象はありません。
スカ調のあげあげナンバーあり、レゲエありと、さまざまな音楽を貪欲に取り入れながら、
すっきりとしたポップスにまとめあげるプロデューサーのセンスは、
かつてのメレンゲの革命児ウィルフレード・バルガスを思わせます。
そしてそんな多彩なプロダクションに、カーオティップ・ティダーディンの歌声がよく応えています。
新人のデビュー作とは思えぬ落ち着きのある声で、
柔らかな色香のある歌いぶりが、おじさんのハートを射抜きます。
デビュー作にしてはちょっと出来すぎの感すらある快作ですね。
Kawthip Thidadin "SAO MORLUM SUM NOI" Grammy G0554030 (2011)
2011-09-06 00:00
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