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海を渡るルークトゥン ラチャノック・シーローパン [東南アジア]

Ratchanok Srilophan  FON TOK NAI TALAE.JPG

こんなルークトゥン、はじめて聴きました。まるでマレイシアの伝統歌謡。
ムラユの香り高いサウンドに、びっくらこきましたよ。
え~、こんな音楽がタイにあったんだ! そんな新鮮なオドロキでした。

ルークトゥンといえば東北部イサーン。海のイメージなんて、まるでないですもんね。
ところがこのジャケット、海辺の岩の上に主人公の女性歌手がたたずみ、
その向こうには大海原が広がっています。
ラチャノック・シーローパンというこの女性歌手、
タイ南部のナコーン・シー・タマラートの出身なんだそうです。

ナコーン・シー・タマラートといえば、古くは六昆(リゴール)と呼ばれた古都。
日本人には山田長政の終焉の地として記憶されている街です。
スリ・ランカから渡来した仏教の中心地で、
かつてポルトガル商人がこの地をリゴールと名付けたように、
古くからインドと中国をつなぐ海洋交易の中継地で、
多くの民族が行き交う文化都市だったんですね。
なるほどその歴史を考えれば、ムラユと同じ音楽があってもなんら不思議はないわけですが、
こんな海洋性のルークトゥンがあるとは、想像だにしませんでした。

アラブやインド的なメロディーに、アコーディオンやマンドリンなどのムラユ楽団や、
シタールやドールなどのインドのサウンド・イメージを散りばめたプロダクションがゴージャス。
ナコーン・シー・タマラートの歴史を凝縮したような、
深い文化混淆を思わせるサウンドをバックに歌う、
ラチャノック・シーローパンのふくよかな柔らかい歌いぶりがまた見事です。
少女のあどけない表情と、オトナぽいしとやかな色気をあわせもったその歌唱は、
今の年齢だからこそと感じさせる魅力にあふれ、今後の成長ぶりも期待させる人ですね。
歴史と文化を背負って練り上げられた最高のプロダクションと、歌手の力量が拮抗した傑作、
ポップ・モーラムのカーオティップ・ティダーディンに続いてグラミーが放った、大注目作です。

Ratchanok Srilophan "FON TOK NAI TALAE" Grammy G0554106 (2011)
コメント(2) 

コメント 2

サユール

ナコン・シー・タマラートはかつて仕事でなんども行ったところですのでとても懐かしくなってしまいました。

僕自身、インドネシア、マレイシアは音楽も食べものも合うんですが、タイはどうもしっくりこない部分があります。でもナコン・シーは食べ物も街の雰囲気も人も割と合いましたね。あそこは比較的ムスリムの数も多いし、料理もマレー料理に近いからでしょう。

ふだんは触手の動かないタイ音楽ですが、こいつは聴いてみたいですね。
by サユール (2011-09-20 22:30) 

bunboni

ぼくがこれを聴いてがぜん興味を持ったのは、
ひょっとしてタイ南部には、ムラーユのような伝統歌謡があったんじゃないかということなんです。
SPとか残ってないのかなあ。誰か発掘してくれないものでしょうか。
by bunboni (2011-09-20 22:50) 

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