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【越南紀行その3 ホイアン編】 會安の旧市街に佇んで [東南アジア]

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南シナ海に流れ出る三角州に造られた東西貿易の要衝ホイアンの旧市街は、
朱印船貿易の時代の息吹を伝える、趣のあるエキゾティックな街でした。
今は失われたヴェトナム文字のチュノムで、「會安」と書いた方がふさわしく思えます。
シクロに乗って観光するのがぴったりな、のんびりした田舎町で、
16~17世紀に繁栄した日本人町と中国人町を結ぶ通称日本橋こと来遠橋や、
京都の町屋にも似た、間口が狭くて奥に長く中庭のある旧家の数々は見ごたえがありました。

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でも、それだけなら、倉敷の美観地区のような観光地みたいなもんですけど、
路地を歩けば天秤棒を肩に渡した商いのおばさんとすれ違い、
地元の人たちの日常を支える活気あふれる市場を歩けば、
盲人が自前のサウンド・システムを手押しながら、
首から提げたマイクで吟じつつ流しをしていたりと、
いきいきとした庶民の生活が町に陰影をつけています。

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そんなホイアンの風光明媚だけではない、
庶民が形作ってきた歴史の息吹を感じさせる景観を舞台に、
エレガントなアオザイに身を包んで撮影された10葉の写真を収めた
若手女性歌手のアルバムを、ホーチミンのCDショップで見つけました。
ジャケットを開くと、表紙の裏側に赤と青の縁取りをした海外郵便封筒の中にCDが収められ、
ページをめくると左に歌詞が、右に台紙に貼った写真を模した
いにしえの写真帖ふうの装丁となっています。

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最近のヴェトナムのポップスのCDは、こうした凝ったデザインのパッケージが多く、
若いデザイナーやアート・ディレクターたちの活躍ぶりが伝わってくるようで嬉しくなります。
いまやアメリカの越僑シーンが制作するCDデザインのクオリティを、完全に凌いでますね。
ヴェトナムのグラフィック・アートの水準の高さは、地元のファッション誌を見ても明らかで、
マレイシアやシンガポールと並び、東南アジアのトップ・クラスに躍り出たことは確実です。

レー・クエンという女性歌手は、今回初めて知りましたが、
調べてみると81年ハノイ生まれの人で、本作が5作目とのこと。
今作はヴェトナムの古いノスタルジックな曲を集めて歌うという企画のもと、
2年の歳月をかけて制作したアルバムだそうです。
充実したプロダクションをバックに歌った力作に仕上がっていて、
今回の旅行で買ってきたCDの中で、一番のお気に入りとなりました。
ここひと月近くヘヴィー・ローテーションだったハ・ヴィのアルバムから、
今ではこのアルバムに交替です。

全編スロー・ナンバーで、ヴェトナムらしい哀切のある泣きのメロディが満載。
一弦琴や胡弓、琴をフィーチャーしたザンカー調の曲もアクセントとしてありますが、
全体的にはアクースティック・ギター、ヴァイオリン、ピアノ、弦オーケストラによる
洗練されたアレンジの抒情歌謡に仕上げられています。
主役のレー・クエンも豪華な伴奏に応え、情感豊かに丁寧な歌いぶりを聞かせ、
聴くほどに惚れ込んでしまいました。
せつせつと迫る哀歓が胸の奥にじんわりと沁み込む傑作ですよ。

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レー・クエンのアルバムを眺めていて、ホイアンの女子高生たちを思い出しました。
ホイアンで宿泊していたホテルから歩いて15分くらいのところに、
高校と中学校と小学校と幼稚園がずらっと並んでいる一角があったんです。
朝6時半にホテル周辺をウォーキングしていたら、
自転車に乗って登校するアオザイ姿の女子高生たちと行きあったんですね。
排気ガス除けのマスクをしているところが、今どきのヴェトナムらしいところでしたけど、
普段着のアオザイ娘たちが、次々と校門の中に吸い込まれていく様子は壮観でした。

それにしても、ヴェトナムの登校時間って、ずいぶん早いんですね。
学校は朝7時始まりで、生徒たちは15分前までに校門をくぐらないといけないそうです。
先生が校門を閉めようとしているところに、
アオザイの裾をひるがえしながら駆け込む姿が印象的でした。

Lệ Quyên "KHÚC TÌNH XƯA" Viettan Studio no number (2010)
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