新感覚のクリオージョ音楽セッション ロサ・グスマン、セルヒオ・バルデオス&エドワルド・ペレス [南アメリカ]
ペルーの新興レーベル、サヤリー・プロダクションがまたしてもやってくれました。
リマのクリオージョ音楽の古老たちによる一大プロジェクト“LA GRAN REUNION” のあと、
あのプロジェクトを発案したギタリスト、ウィリー・テリーと
カホン奏者エドゥアルド“パペオ”アバンのデュオ作がリリースされましたが、
今度の新作は、これまでのサヤリー制作のアルバムとはちょっと趣向が違います。
単にクリオージョ音楽の伝統を継承しただけではない、
現代的なセンスを取り入れたクリオージョ音楽の21世紀ヴァージョンとも呼びたい内容で、
これが素晴らしい仕上がりとなっているんですね。
女性歌手とギターとベースの3人を基本に、曲によってブラシのドラムス、パーカッション、
アコーディオンが加わるだけのシンプルな編成で、すべてアクースティックな音づくり。
歌手のロサ・グスマンは、名歌手ホセー“タト”グスマンの娘で、
幼い頃からクリオージョ音楽の伝統の中で育ってきた人。
ギタリストのセルヒオ・バルデオスは、ブラジル音楽やジャズの影響を受け、
スサーナ・バカのバックを8年務めたという経歴の持ち主。
そしてベーシストのエドワルド・ペレスは、
ニューヨークのジャズ・シーンで鍛えられたアメリカ人ジャズ・ベーシスト。
こうしたそれぞれ異なるバックグラウンドを持つ3人がコラボしたことで、
クリオージョ音楽の名作曲家フェリーペ・ピングロ・アルバのバルスを取り上げても、
伝統的なクリオージョ音楽とは感覚の異なるリズム感やモダンなコード使いが自然に溶け込み、
コンテンポラリーなセンスを備えたクリオージョ音楽に生まれ変わるのでした。
フォービートやフラメンコをさらりと取り入れたアレンジも、なかなか粋です。
誤解のないように付け加えておきますけど、新感覚のクリオージョ音楽といっても、
スサーナ・バカみたいなのを思い浮かべられちゃあ、困りますよ。
あんな味もそっけもない歌手とロサ・グスマンとでは、比べ物になりません。
今年の初めに話題を呼んだ、チャブーカ・グランダの未発表曲集を思い浮かべてもらったほうが、
近い味わいといえます。
ロサのエレガントな甘さのある温かな歌声は、
伝統的なクリオージョ音楽の味わいを保ちつつ、現代的なセンスとも見事にマッチしていて、
不純物のない声と明解なディクション、さらに正確な音程にも感嘆させられます。
こぶしやヴィブラートを使わず、また、メロディをいっさい崩すことなく、
ストレイトに歌い切る清廉さがすがすがしく、
2枚組というヴォリュームがあっという間に感じられる、今年のクリオージョ音楽の最高傑作です。
Rosa Guzmán, Sergio Valdeos & Edward Pérez "DESPERTAR" Sayariy Producciones 7753218000197
2011-12-17 00:00
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