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ウェザー・リポートの「バードランド」とフィリピン民謡 ライアン・カヤビャブ [東南アジア]

Ryan Cayabyab JLP110.JPG   Ryan Cayabyab  ROOTS TO ROUTES  PINOY JAZZ Ⅱ.JPG

ウェザー・リポートの78年の大ヒット曲「バードランド」のネタモトかと、
かつて騒がれた曲に、フィリピン民謡「テレポン」があります。
フィリピンのジャズ・ピアニスト、ライアン・カヤビャブがアレンジした「テレポン」は、
テーマ・メロディーが「バードランド」とほとんど同じのうえ、アレンジや構成もまんま引き写しで、
どちらかがパクったことは、聴けばイッパツでわかる演奏となっていたために、
ちょっとした騒ぎに発展したのでした。

そもそも「バードランド」は、ウェザー・リポートらしからぬポップなメロディーだったので、
ネタモトがあったというニュースは、いかにもという納得感もあり、
しかもそれがフィリピン民謡という意外性に、ぼくも思わず食いついたものでした。

ところが、パクったのはライアンの方だったことが、のちになって判明。
「テレポン」のメロディーが「バードランド」と似ていたので、
「バードランド」と同じアレンジでやってみた、というのがライアンの言だったのですが、
「テレポン」の原曲を聞いてみても、「バードランド」とメロディが似ているとは思えず、
ライアンがパクったのは歴然。
おかげで、ジョー・ザヴィヌルに批判的な評論家が、
「帝国主義者ジョー・ザヴィヌルが第三世界の音楽を搾取!」などと勢いづいて非難したのも、
すっかりドッチラケになってしまったのでした。

さて、そんなお騒がせの「テレポン」は、当時無名のフィリピンのキーボード奏者、
ライアン・カヤビャブのデビュー作に収録されていました。
全曲フィリピン民謡を素材にジャズ・ロック化したこの作品、かなりユニークなもので、
原曲のメロディーがわからないほど、ぐちゃぐちゃにアレンジされています。
イエロー・マジック・オーケストラ版「ファイアー・クラッカー」を先取りしたような演奏などもあり、
いま聴いてもその野心的なアレンジは新鮮です。

その後ライアンは、作編曲家として数多くの映画音楽や合唱曲の作曲を手がけるほか、
プロデューサーとしても活躍し、フィリピンのクインシー・ジョーンズと称される
フィリピン音楽界の大フィクサーとなりました。
90年代に話題を呼んだおこちゃまグループ、スモーキー・マウンテンも、
ライアンが仕掛け人でしたね。

そんな大物となったライアン・カヤビャブの出発点が、
こんな野心的なジャズ・ロック作品だったというのも、なかなか面白い話。
当時、マヌ・ディバンゴの“AFROVISION” と一緒によく聴いたっけなあ。
第三世界の音楽(「ワールド・ミュージック」の旧名ですよ)に興味を持つファンの間で、
ちょっとだけ話題になったレコードですけど、その後だいぶ経ってから、
フィリピンでCD化されているのを知ったときは、懐かしく思ったものです。

[LP] Ryan Cayabyab "ROOTS TO ROUTES : PINOY JAZZ Ⅱ" Jem JLP110 (1978)
Ryan Cayabyab "ROOTS TO ROUTES : PINOY JAZZ Ⅱ" Telesis TLS-KD103 (1978)
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NO NAME

はじめまして、波田 真と申します。犯人の出頭というわけではありませんが、以下の文章を自分のFBにサレンダー・報告させていただきました。

「  大昔でしたが、大失敗の巻と、その顛末の報告。
  その大失敗を親切に僕の名前を出さずに報告してくれていたページを2年前に見つけました。
  世の中「ビッグデータ」とやらでネット上にあふれるデータの中でこうした報告がなければ、僕の失敗も「誤りと訂正」は出しましたが、闇に葬られていたかもしれません。しかし僕としては、そうなってしまうと記事や資料の意味がない、と思うのです。
 ネットの良さは、このような事もあったという検証せれてこそ価値があるのではないか、自分の大失敗を報告してくれたページに、ありがたさを感じてしまったくらいです。
 記事を書いた直後、本人にようやくフィリピンで会えたので「バイコール(ディストリビューター)にオリジナルだと聞いたけれど、オリジナルでしょう」と本人確認したら、「いやアレは民謡とそっくりだったので、自分風に演ってみた」という話で慌てて訂正をお詫びを出版社に次号で出してもらったのですが、それを読んでいる人は少ないと思います。
 
 詳しくは、どんな大失敗か?それはこのリンクを読んでください、恥ずかしならの大失敗でした。
 それにしても、この記事もサーバーが変わったり、永遠に続くものではありません。ネット時代の、ビッグデータを検証する「プルーフ・エンジン」みたいな事が出来る時代が是非来て欲しいと、エンジンプログラムを模索中ですが、なかなかうまく戦略が見いだせません。タグというのは意外と当てにならなく欲張りすぎてしまうのです。
 という訳で顛末記でした。        」

リンクはこちら、公開しているのでFBのアカウントをお持ちでしたらご覧いただけるかと思います。

2年近く遅れたのは、そのお詫び訂正記事の出ているミュージック・マガジンをヤフオク、古本屋で探してきましたが、見つからないのでしびれを切らして、見切り発車です。

ちなみにライアン・カヤビャブはその後大活躍ですね、ミュージカル「ラ・フィリ」等でも活躍していたようですね。グーグルのサテライトで調べてみるとフィリピンの変わり様は驚くばかりです。今後もフィリピンの音楽のニュースを楽しみにしています。




by NO NAME (2015-12-05 20:09) 

bunboni

波田真さんから直接コメントをいただけるとは思いもよりませんでした。ありがとうございます。早速書棚をチェックしたところ、すぐ件の波田さんの訂正記事が見つかりました。われながら、記憶は確かです(笑)。
ニューミュージック・マガジン79年4月号のレターズ欄に「『テレポン』に関して訂正します」として載っています。
by bunboni (2015-12-05 20:35) 

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