奴隷文化が生んだマロヤを掘り下げて ランディゴ [インド洋]
海老原政彦さんがレユニオン音楽を紹介した音樂夜噺で、
メディ・ジェルヴィルに次いで印象に残ったアルバムが、このランディゴでした。
マロヤをベースに、バラフォンやンゴニといったアフリカの楽器も使って、
マロヤのアフロ的成分をより深く掘り下げようとしているグループです。
このグループの面白さはなんといっても、効果的な楽器の使い方にあります。
たとえば、ビリンバウ、カポエイラ、サンバ・ジ・ローダなどを歌詞に織り込んだ“Beleza” では、
ブラジルのビリンバウと同じ楽器で、レユニオンでボブレと呼ばれる民俗楽器を大きくフィーチャーし、
バイーアのアフロ・ブラジリアン音楽と共振してみせます。
ボブレは、普段マロヤの演奏のなかであまり目立った使われ方をしないので、
これほど鮮やかにボブレとビリンバウの関係を示して見せたのには感心しました。
この曲では、16世紀、無人島のレユニオンにアフリカの奴隷が連行されて生まれたマロヤと、
ブラジルに送られた奴隷たちが生み出したバイーアの音楽文化の歴史を、
鮮やかに示してみせたというわけです。
この曲を含め、アルバム全曲を書いたリーダー兼シンガーのオリヴィエ・アラストが、
マロヤの歴史を深く理解しているのはもちろんのこと、
アフリカ音楽ばかりでなく、ブラジル、ジャマイカなどの音楽にも造詣が深いことが
どの曲からもしっかりと伝わってきて、すっかりまいってしまいました。
アコーディオンを使った演奏も、クレオールぽいセガにするのではなく、
よりアフロ色の強いディープなサウンドに仕上げているし、
バラフォンを使った演奏では、マリのネバ・ソロを思わせるサウンドを聞かせます。
ンゴニを使った“Lamour” の三連リズムやメロディなんて、まるでグナーワみたいじゃないですか。
メロディカを使っているのも、またユニークですね。
ダブまで取り入れているのは、明らかにオーガスタス・パブロの影響にせよ、
マロゲなどといってマロヤとレゲエを安直にミックスしていたかつての連中とはまったく深みの違う、
ブラジルやカリブの奴隷文化が生み出した音楽への共感が伝わってくるようです。
メディ・ジェルヴィルといい、ランディゴといい、自分たちをアイデンティファイする音楽として、
マロヤを深く捉え直そうとしているレユニオン新世代の誕生は頼もしい限りで、
今後マロヤがどのように展開していくのか、楽しみです。
Lindigo "MALOYA POWER" Hélico HWB58123 (2011)
2012-04-17 00:00
コメント(2)
こんにちは!
先日は私のブログにコメントいただきましてありがとうございました。CDの貴重な情報までいただき、恐縮しております…。
Lindigo、来日が決まって本当に楽しみです!予備知識なしで行こうと思っていたのですが、bunboni様のレビューを読んで先に聴きたくなってきました。これからも面白い音楽をたくさん紹介してください。またこちらに読みに来ます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
by アズサ (2012-07-23 23:28)
こちらこそ、ありがとうございます。。
曲名を読み間違えて、コメントしてしまいました。
うっかりもので、申し訳ありません。。。。
これからもよろしくお願いします。
by bunboni (2012-07-24 06:37)