ハリージ+グナーワ アスマ・レムナワル [中東・マグレブ]
いきなりカルカベとゲンブリが奏でるグナーワのリズムに始まり、
そこにハリージの三連が覆いかぶさるオープニング。
なにこれっ! カッコよすぎっ!
さらにホーンズが加わり、ファンク・ベースは躍動しまくり、
パーカッシヴなハリージ・サウンドが暴れまくる。
うわぁ、このアレンジ、凝ってるねえ。
「ヴォイス・オヴ・グルーヴ」のセルフ・コピーを持つ
モロッコの女性シンガー、アスマ・レムナワルの新作は、
流行のハリージをたっぷりと取り入れた仕上がり。
ミディアム・ナンバーの洗練されたシャバービーぽい曲にも、
ハリージのアクセントを持ったリズムが滑り込んでくるといった按配。
全曲これでもかっ!とばかりにハリージで迫っているわけではなく、
カーヌーンをフィーチャーした、ウチコミ中心のシャバービー・ナンバーや、
ピアノやギターに導かれて歌うスロー・ナンバーに、アラビックな旋律が全く出てこない、
西洋ポップス調ナンバーも箸休めにあったりして、
アスマは艶っぽいせつなげな歌声も聞かせてくれます。
ビートを利かせた曲では、重厚なガイタの合奏をフィーチャーした、
バングラ・ビートにも似たパーカッシヴなダンス・チューンから、
パーカッション隊に煽られて男女コーラスや弦オーケストラが舞う
典型的なハリージ・サウンドの曲までありますが、
ベスト・トラックは、ハリージ+グナーワ+ファンクに仕上げた6曲目でしょう。
3つのジャンルを横断したリズム・アレンジにのって、
メロディはライという見事なミクスチャーぶりで、
アスマのキレのあるコブシも、ここぞとばかりにキメてくれます。
アルバム・ラストは、ウードとパーカッションを伴奏に、
男性コーラスの手拍子で歌う伝統スタイルの曲。
全曲すべて表情が違うマテリアルを並べたのは壮観で、
さまざまなリズム処理を施したプロデュースの手腕にも脱帽です。
アルバム・リリースは2010年ということで、なんだ、ハリージ・ブームは、
民主化運動の「アラブの春」よりも前から始まっていたんですね。
アスマのアルバムは、05年の“SHAY A'ADY” に
08年の“MEN HENA LE BOKRA” と愛聴してきましたけれど、ファンでいて良かったぁ。
ついに完成した彼女の最高作とめぐり合え、大満足であります。
Asma Lmnawar "ROUH" Rotana CDROT1751 (2010)
Asmaa Lemnawar "SHAY A'ADY" Funoon Aljazeera 07243-873660-2-2 (2005)
Asma Lmnawar "MEN HENA LE BOKRA" Rotana CDROT1420 (2008)
2012-04-19 00:00
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