ブールの無頼と哀愁 ゼブダ [西・中央ヨーロッパ]
スケールのでっかいバンドになったなあ。
フランス、トゥールーズのロック・バンド、ゼブダの新作を聴いて、
シャアビが持つ無頼と哀愁を深めたその円熟ぶりに、感嘆のタメイキが洩れました。
ゼブダといえば、98年作“ESSENCE ORDINAIRE” の、
マグレブ度数の高いミクスチャー・ロックにノックアウトを食らい、
95年作“LE BRUIT ET L'ODEUR”、92年デビュー作“L'ARENE DES RUMEURS” と
さかのぼって聴いて大ファンとなったんですが、
その後のアルバムもメンバーのアルバムも不満だらけで、
“ESSENCE ORDINAIRE” までのバンドだったのかと落胆していたのでした。
特に、2年前に出たゼブダのメンバー、ムース&ハキムの2枚組ライヴ盤がいけませんでした。
ディスク1のカビール歌謡カヴァー・プロジェクト、オリジンヌ・コントロレは最高なのに、
ディスク2のスカ・パンクぶりは完全にゲンメツ。ゼブダ再結成・新作リリースのニュースにも、
あのディスク2に近いサウンドなんじゃないのと、完全無視を決め込んでしまったのでした。
だもんで、ゼブダの新作はいいぞ!の評判にも、「どーだか」と信用せず聴かずにいたら、
新作ジャケットとタイトルに秘めたメッセージ、フランス大統領選でのサルコジ再選阻止が叶い、
急遽、新曲1曲とライヴ2曲をボーナス・トラックに加えた限定盤が新たに発売されました。
遅まきながらその限定盤を聴き、ぶっ飛んだっていうわけです。
ゼブダのスゴさを語るのに、もう“ESSENCE ORDINAIRE” を引き合いを出す必要はありませんね。
あのアルバムをはるかに凌ぐ、スケールの大きな音楽性を獲得した最高傑作がここにあります。
シャアビやラガを消化しきったハイブリッドなミクスチャーは、年輪を重ねた手練を感じさせ、
やぶれかぶれな若者とは奥行きの違う、
酸いも甘いも知った大人の内面から沸き上がるパワーに圧倒されます。
非ブール系メンバーのロック色が抑えられたということなのか、
当初懸念していたパンクのりの前のめりなタテノリ・ビートも登場せず、
ソウルぽいタメの利いたグルーヴが快感このうえありません。
アルバム・ラストのファンクなライヴ・トラックには、鳥肌が立っちゃいましたよ。
これから買う人は、この限定盤がぜったいのオススメです。
彼らの政治的メッセージやバックグラウンドをほとんど解していないぼくのような人間にも、
煮えたぎった熱情がリアルに伝わってくる、彫りの深い傑作です。
Zebda "SECOND TOUR (Édition Limitée)" Barclay 3701180 (2012)
2012-07-12 00:00
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