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危機迫るトンブクトゥ ル・ミステール・ジャズ・ド・トンブクトゥ

Le Mystere Jazz De Tombouctou.JPG

トンブクトゥ。
サハラ砂漠に憧憬を持つ歴史ファンには、
その名を口にするだけで、独特の感慨が胸に広がる伝説の地です。
15~16世紀に塩と金のサハラ交易の拠点として栄え、ソンガイ帝国の王の庇護のもと、
イスラーム布教の中心地として、聖職者や学者、医師、裁判官、学生でにぎわった学問都市でした。

そんなイメージを歴史書で勝手に膨らませたまま、
現実のトンブクトゥに行ってみると相当にがっかりするらしく、
じっさい旅した人たちが口々にするのは、「な~んもない、砂まみれの村」という身もフタもないもの。
まー、そうなんでしょうねえ。栄華を誇ったといったって、そりゃ大昔の話で、
1591年にモロッコの軍隊がトンブクトゥを攻撃し、
略奪・焼き討ち・殺戮の果てにトンブクトゥは荒れ果ててしまったんですから。
その後、大西洋の海上ルートの発展に伴い、サハラ交易の重要性も薄れ、
衰退の一途をたどった都市トンブクトゥは、ただの田舎町に成り果ててしまったというわけです。

なんで突然、トンブクトゥについてあれこれ書いてるのかといえば、
アフリカ音楽コレクターには垂涎のウルトラ・レア・アルバム、
ル・ミステール・ジャズ・ド・トンブクトゥの77年作がついにCD化されたからです。
「幻の名盤」という使い古された言葉が、これほどふさわしいアルバムもめったになく、
大騒ぎしたいところなんですけど、このアルバムの存在を知る人がいったいどれだけいるのやら。

マリ政府が隣国ギネアの国営レコード会社シリフォンにならって設立した国営レーベル、
クンカンからリリースされた1枚なんですけれど、クンカンのレコードはプレス数が少なく、
ほとんど出回らなかったばかりか、CD時代になっても、
シュペール・ビトンとナシオナル・バデマの2枚しか復刻されなかったので、
このレーベルの存在を知るのは、相当年季の入ったアフリカ音楽マニアだけでしょう。

そんなマニアのみぞ知るレーベルのクンカンを、ジャズやディスコなどのレア音源を復刻する
オランダのユニークなレーベル、キンドリッド・スピリッツが目をつけたというのも面白い話。
昨年、クンカンのカタログの中でも屈指の歴史的名盤といえる、
ソリ・バンバが率いたカナガ・ド・モプティをリイシューしたのに続き、
今回ル・ミステール・ジャズ・ド・トンブクトゥを選盤するとは、その目利きぶりにウナらされました。

カナガ・ド・モプティのオリジナルLPは所有していたぼくも、
ル・ミステール・ジャズ・ド・トンブクトゥは、一度も現物にお目にかかったことがなく、
どんなサウンドが聴けるかとワクワクしましたよ。

サヘルに暮らすタマシェク、フルベ、ソンガイ、ボボ、バマナといった諸民族の伝統にもとづく、
泥臭いメロディがレパートリーに並ぶところは、トンブクトゥの土地柄をよく反映していますね。
そのメロディの泥臭さとは対照的に、演奏は洗練されたものとなっているところが印象的です。
ギネアのオーケストラに比べると、
どっか一つネジが緩んだような演奏がマリらしいところですけれど、
ホーンズ含むアンサブルも充実した、マリ音楽黄金時代を飾る記念碑的な作品といえます。

今年に入り、反政府勢力のトゥアレグ人組織
アザワド解放民族運動(MNLA)が北部でクーデターをおこし、
トンブクトゥも4月には彼らの支配下に置かれました。
さらにアル=カーイダ系のイスラーム過激派勢力アンサル・ディーンも活発に活動していて、
トンブクトゥの歴史的な霊廟をすべて破壊すると宣言しています。
MNLAとアンサル・ディーンは敵対関係にあると聞いていましたが、
最近両者が新イスラーム国家の樹立を目指して合流したという、
悪夢のようなニュースが伝わってきました。

ジャケットに飾られたトンブクトゥの象徴、ジンガリベリ・モスクを破壊するのなら、
バーミヤン遺跡の大仏を破壊したタリバンに続く暴挙です。
なぜ彼らはそうまでして世界を敵に回したいんでしょう。

Le Mystere Jazz De Tombouctou "LE MYSTERE JAZZ DE TOMBOUCTOU" Kindred Spirits KS-MALI-02CD (1977)
コメント(2) 

コメント 2

おぎてつ

仰るとおり、バーミヤン遺跡の破壊は酷いものでしたね。
もう二度と復元は出来ないでしょう。
考える度に腹がたって仕方ないです。

そして、トンブクトゥの世界遺産も壊すつもりなんですか!
何とか出来ませんかねぇ!

他の宗教を一切認めないという不寛容さ。
はっきり云って、反吐が出ます。
by おぎてつ (2012-07-14 22:24) 

bunboni

イスラームは本来不寛容な宗教でないのに、
なぜ原理主義者は不寛容に走るんでしょうか。

形あるものをいくら滅ぼしても、人間の想像力を滅ぼすことはできません。
形あるものは必ず復元できるし、復元が新たな願いを生み出すと信じます。
by bunboni (2012-07-14 23:16) 

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