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芸能の味をちょこっとまぶして アントニア・アジネッチ [ブラジル]

Antonio Adnet Pra Dizer Sim.JPG

ブラジルの女性シンガー・ソングライター、アントニア・アジネッチの2作目となる新作。
アントニアの涼しげな美声が吹き抜ける、初夏の爽やかさを感じさせるMPBアルバムです。
アルバムの出だし1曲目のチェロとハープの調べなんて、みずみずしさいっぱいで、
避暑地の高原で森林浴してるような気分を味あわせてくれます。

アントニアは、ロベルタ・サーのライヴDVDでバック・バンドのギタリストを務めていましたが、
本作のプロデュースにも、ロベルタ・サーを手がけるロドリゴ・カンペーロが、
アントニアのお父さんでギタリストのマリオ・アジネッチとともにクレジットされています。
レコード会社もロベルタと同じMP,Bで、ロベルタ人脈なんでしょうか。

デビュー作からどんどん鮮度が落ちてくロベルタ・サー(新作もがっかりでした)より、
ぼくにはアントニアのこのアルバムの方がずっと魅力的です。
レニーニ、ジョイス、ペドロ・ミランダといったゲストたちも、
それぞれどんぴしゃな曲で起用されていて、好感が持てますよ。

アントニアの自作曲のほか、ジョアン・ドナートやモアシール・サントスの曲などもカヴァー。
フォービートのアレンジが目立ちますが、
ジャジーな雰囲気とならず、爽やかな青空を感じさせるところは、
セルジオ・メンデスやジョアン・ドナートなどとも共通する、ブラジルらしいポップ・センスですね。

このアルバムの良さは、きれいで爽やかなだけのMPBアルバムに終わらせず、
デニス・ブレアン作の“Boogie Woogie Do Rato” という
ノヴェルティなサンバを取り上げたところにあります。
デニス・ブレアンの作曲というと、45年にシロ・モンテイロが歌った
“Boogie Woogie Na Favela” が有名ですけれど、
“Boogie Woogie Do Rato” もサンバとブギウギの秀逸なミクスチャーで、
かつてノーヴォス・バイアーノスもカヴァーしていました。
46年にジョエルとガウーチョが歌った、こんな古い曲をカヴァーするセンスにも感心しますが、
ノベルティな味わいをそのままいかした仕上げに、すっかり嬉しくなっちゃいました。

こういう芸能ぽい曲を取り上げるところは、
アントニアがアーティスティックな方向に走るMPBアーティストとは、
違う資質の持ち主であることを示しているようで、鮮度勝負じゃない息の長さを期待できそうです。

Antonia Adnet "PRA DIZER SIM" MP,B 60253701309 (2012)
コメント(2) 

コメント 2

土木作業員

お!私この一週間毎日聴いてるヤツ!
ロベルタ・サーにシンプルに歌のよさを活かすような感じがなくなってしまい、がっかりしてたトコですが、まさかあのギターの娘がこんなに良いとはうれしい誤算でした。Boogie Woogie do Ratoいいですよね~。
ほんと歌謡サンバのあの粋で洒落っ気たっぷりの感じを湛えてて、うれしくなります。ジョエルとガウーチョの歌なんですね?Japonesaとかも歌ってほしいなあ。
彼女のFravoも結構お気に入りです。
by 土木作業員 (2012-07-16 18:57) 

bunboni

お、土木さんも聴かれてましたか。
長持ちしてくれると、いいんですけどねえ。
by bunboni (2012-07-16 22:41) 

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