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名盤誕生物語 サリフ・ケイタ [西アフリカ]

Salif Keita Soro Syllart.JPG

名盤は一日にしてならず。

アフリカン・ポップスの金字塔、サリフ・ケイタの『ソロ』もその例外ではありませんね。
サリフ・ケイタがこのアルバムで華々しく世界デビューしたように今では思われていますが、
発売当初から爆発的ヒットを呼んだわけではありませんでした。

むしろ最初に日本に入ってきた時は、かなり冷淡な反応だったように記憶しています。
なんせ当時の日本のアフリカ音楽ファンといえば、
リンガラ(ルンバ・ロックのこと)しか聴かない、
偏ったマニアがはびこっていた時代だったので、
サリフ・ケイタのプログレッシヴなサウンドは、まるでウケが悪かったんですよ。

日本でアフリカ音楽の輸入盤をもっとも数多く紹介していた雑誌
『ブラック・ミュージック・リヴュー』でさえ、このアルバムを取り上げずじまい。
同誌の87年ベスト・レコードでも、
誰一人このアルバムを挙げなかったという完全無視状態には、
呆れを通り越して怒りを覚えましたよ。

もっとも輸入盤じたいが、ほとんど日本に入ってこなかったという事情もありましたけどね。
『ソロ』が最初に出たのは、パリに拠点を置く
インディ・レーベルのシラール・プロダクションからで、
当時のアフリカン・ポップスにしては珍しい、地味なモノクロ・ジャケットでした。
日本に最初に入ってきたのは、87年の夏頃だったと記憶しています。

Salif Keita_Soro_Celluloid.JPG

その後、シラール・プロダクションが配給契約を交わした
フランスのセルロイドからも、LPとCDが出たんですけれど、
これもほんのわずかしかプレスされなかったんじゃないのかな。
日本の店頭でセルロイド盤を見かけることはほとんどありませんでした。

Salif Keita Soro Stern's LP.JPG   Salif Keita_Soro_Stern's CD.JPG

潮目が変わったのは、イギリスのスターンズからLPとCDが同時発売されてからです。
ごく少数しか入ってこなかったフランス盤と違い、スターンズ盤は大量に入荷し、
輸入盤ショップの店頭にもどーんとディスプレイされるようになりました。
ジャケットがシラール盤とは変わりましたけど、
多くの人にとっておなじみなのは、こちらのデザインでしょう。

雑誌に紹介され始めたのもこの頃で、ようやく『ミュージック・マガジン』にも、
88年4月号に輸入盤紹介の記事が載りました。
ちょうどその頃、サリフ・ケイタが音楽を担当した映画『ひかり』が日本でも上映され、
サリフ・ケイタという名が少しずつですけど、メディアに露出するようになっていました。
ようやくこの頃になって、リンガラおたく以外の
普通の音楽ファンの耳にも届くようになったわけです。

とはいっても、まだこの時点ではシラール、セルロイド、スターンズという
インディ・リリースのみで、インディ・セールスに目をつけた
メジャーが取り上げるのは、もう少しあとになってからのこと。
世界中で『ソロ』が聞かれ大きな話題となるのは、フランスでEMI/パテ・マルコーニが、
イギリスでアイランドが販売権を獲得し再発してからでした。
ジャケットはいずれもスターンズ盤LPのデザインが採用されたため、
シラール盤のオリジナル・ジャケットは、知る人ぞ知るものになってしまいました。
シラール盤の写真とスターンズ盤のレタリングを使った、南ア盤なんて変わり種もあります。

Salif Keita_Soro_SHIFT(V)45.jpg

日本ではアイランドと契約していたポリスターが88年7月にリリースし、
初めてぼくがこのアルバムを聴いてから、すでに1年が経っていました。
ユッスー・ンドゥールの89年の世界デビュー作『ライオン』が発売前から話題を集め、
鳴り物入りでフランス、ヴァージンからリリースされたのとは違い、
サリフ・ケイタの世界デビュー作『ソロ』は、ゆっくりと時間をかけ、
名盤の地位を獲得したのです。

[LP] Salif Keïta "SORO" Syllart Productions SYL8327 (1987)
Salif Keïta "SORO" Celluloid 66883-2 (1987)
[LP] Salif Keïta "SORO" Stern's 1020 (1987)
Salif Keïta "SORO" Stern's STCD1020 (1987)
[LP] Salif Keïta "SORO" Shiifty SHIFT(V)45 (1990)
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