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サンバに人生の機微を学ぶ マノ・デシオ・ダ・ヴィオラ [ブラジル]

Mano Decio Da Viola  CAPITULO MAIOR DA HISTORIA DO SAMBA.JPG

ジャケットからしてタマんないですね。
ど派手なピンク色の壁の前で、上半身裸にソフト帽とグラサンでキメたオヤジが写るジャケット。
いかにもサンバの顔役といったヴェーリャ・グァルダの貫禄ぶりにタジタジです。

47年にインペリオ・セラーノを創設したメンバーのひとりでもある、
マノ・デシオ・ダ・ヴィオラの74年作。
オリジナルのタペカール盤はどうしても見つからず、長年日本盤でガマンした1枚で、
ブラジルでCD化されるとは、なんだか感慨深いものがあります。

カーニバルで歌われるサンバ・エンレードにテーマ性をもたせて物語にしたのがマノと言われていて、
このアルバムにもそんなマノのサンバ・エンレード名曲がずらりと並んでいます。
なかでもマリア・クレウザも歌った“Exaltação A Tiradentes” が個人的なフェバリット。
エンレード作家として名高いシラス・ジ・オリヴェイラとの共作曲
“Heróis Da Liberdade” もいいなあ。
マノはアフロ色濃いサンバも書くなど、作風が一様でないところも魅力ですね。

こういう人情味あふれる味わい深いサンバを聴くほどに、
どんな人生を送れば、これほど奥行きのあるメロディが書けるのかと思わずにはおれません。
こういう感慨は、はじめてサンバを聴いた70年代から今に至るまで、ずうっと変わらずに心にあって、
たとえばマノが少年時代親元を離れ、
新聞売りをしつつ道端で寝るような生活だったことを知るにつれ、
多くのサンビスタがそうした労苦を重ねながら、
人生への感謝を謳い上げるところに、考え込んでしまうのです。
それは言うまでもなく、豊かな日本でぬくぬく育ってきた自分との
あまりの距離を思い知らされるからなんですけれども。

マノ・デシオ・ダ・ヴィオラやネルソン・カヴァキーニョに
カルトーラといったサンビスタたちとの出会いは、
ぼくのそれまでの音楽観を決定的に変えました。
有り体に言うなら、以後、アメリカやヨーロッパの
青二才のシンガー・ソングライターたちが歌う人生など、
まったく聞けなくなってしまいましたから。
人生の機微を学ぶに値する音楽がどこにあるのか、ぼくはそれをサンバに見出したのです。

Mano Décio Da Viola "CAPÍTULO MAIOR DA HISTÓRIA DO SAMBA" Discobertas DB193 (1974)
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