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百年前のクリオージョ音楽 モンテスとマンリーケ [南アメリカ]

Montes Y Manrique  1911-2011  CIEN ANOS DE MUSICA PERUANA.JPG

百年も前に録音されたペルーの都市歌謡クリオージョ音楽が甦る、衝撃の2枚組CD。
ペルーの大学の研究機関が2010年11月、
録音100周年を迎えるのに先立って出版したもので、
調べてみたら、日本の東大の駒場図書館にも寄贈されてたりするんですが
CDショップなど一般に流通されていないので、
ずっとその存在を知られぬままとなっていました。
深沢美樹さんがミュージック・マガジンに紹介しなかったら、
誰も気付かなかったんじゃないでしょうか。

88ページにも及ぶずっしりとした解説書が付いたこのCD、
その資料性としても十分貴重ですけど、
お勉強用のCDなんぞに用はないという、実質重視の音楽ファンにも絶好の内容です。
なってったって驚かされるのは、とても百年前とは思えない演唱のなまなましさ。
バルス、カンシオーン、マリネーラ、ポルカ、トンデーロ、ヤラビ、
トリステ、マズルカなどの幅広いレパートリーをいきいきと歌っているばかりでなく、
ピエサ・イミタティーバという掛合い漫才のような演芸も楽しめます。

この幅広い演目は、当時のメディアの主流が劇場であったことを思えば、
素直に理解できることで、20年代にフェリペ・ピングロらによって歌謡化する以前の、
ペルーの都市大衆芸能の典型的な姿だったんでしょうね。
このエドゥアルド・モンテスとセサル・アウグスト・マンリーケのコンビは、
アメリカのレコード会社コロンビアのリクルーターに実力を認められて
ニュー・ヨークへ招かれ、3ヶ月の滞在期間中に172曲を録音したのだそうで、
本作にはそのうち29曲が収録されています。

あ、いや、実際は30曲ですね。
なぜかクレジットされてないんですが、ディスク1の最後には、
行進ラッパ風のトランペットにパーカッションも加えたピエサ・デスクリプティーバが、
シークレット・トラックのように収められています。

このCDを聴いていると、現在のクリオージョ音楽が、
いかにドラマティックな歌唱表現を深めたか、
ギター奏法もいかに高度に発達したのかを、あらためて気付かされます。
だからこそ、この時代のクリオージョ音楽の味わいというのもまた格別で、
けっして素朴などといった類のものではありませんね。
この時代ならではのヴァーサタイルでエンタテインメントな芸能の味わいは、
ドライで辛口な現代のクリオージョ音楽にはないものです。

こんな素晴らしい音源を聴いてしまうと、まだまだ膨大に残されている
20世紀初頭の録音が気になって仕方なくなりますね。
キューバのトローバやルンバだって、あ~、死ぬまでに聴きたいっ!

Montes Y Manrique "1911-2011 CIEN AÑOS DE MÚSICA PERUANA" Instituto De Etnomusicología no number
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