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フエ古謡の侘び寂び フォン・モ [東南アジア]

Huon Mo Mua Hue.JPG

ヴェトナムのザンカー系女性歌手の旧作を、10枚まとめ買いしちゃいました。
大御所のトゥー・ヒエンをはじめとする9人の女性歌手が、04年から07年に出した10タイトル。
そのなかでダントツで光っていたのが、フォン・モという女性歌手の05年のセカンド作でした。

雨音と雷鳴に始まる印象的なオープニング。
ダン・バウの響きに導かれて、中音域が豊かなフォン・モのしっとりとした歌が始まると、
鄙びたヴェトナムの古都を散策するような情緒に浸れます。
1曲目の最後にお寺の鐘の音が鳴り、秋の虫の音が聞こえてくる侘び寂びの風情は、
日本人なら誰でも素直に胸に染み入るんじゃないでしょうか。

フォン・モは、ハノイで生まれてまもなく中部の古都フエに移り育ったため、
フエを生まれ故郷のように思っており、フエへの郷土愛を強く持っているといいます。
ハノイ舞台映画大学卒業後、テレビの歌番組の演出に携わり、歌手デビューは遅かったようですが、
落ち着きのあるアルト・ヴォイスはザンカーを歌うのにうってつけで、
フエの古謡を歌ったこのアルバムは、フォンの思い入れがたっぷりと込められています。

やさしくゆったりとした母性的な歌い方は、渋いフエの古謡とベスト・マッチングで、
ダン・バウ(一弦琴)、ダン・チャン(箏)、ティウ(笛)の響きをいかしたプロダクションも、
申し分ありません。4曲目のエレピやシンセのセンスのいい使い方にも感心させられました。

さらに聴きものなのが、生音のみの伝統的な弦楽アンサンブルで聞かせるラスト2曲で、
8曲目はカー・フエのスタンダード“Lý Mười Thương”。
♪アー、タァ~ン、タン、ターン♪ の印象的なフレ-ズが耳残りするこのフエ民謡は、
フーン・タンの『ドラゴンフライ』の1曲目を飾り、世界的にも有名になりましたね。

実はぼくもこの曲を知ったのは、フーン・タンの『ドラゴンフライ』がきっかけ。
のちになって、フーン・ラン、カム・リー、トゥー・ヒエンなど、多くの歌手が歌っていることを知りました。
なかでも伝統楽器のアンサンブルで歌った、
ヴァン・カインのヴァージョンを一番気に入っていましたが、
フォン・モが歌ったヴァージョンもヴァン・カインに迫る仕上がりとなっています。

ダン・チャンのみをバックに歌ったラストの9曲目でも、伝統的な唱法を駆使し、
きめ細かなこぶし使いが見事な余韻を残します。
侘び寂びのあるフエ古謡を現代的な演出でくるんだ名作ですね。

Hương Mơ "MƯA HUẾ" Hồ Gươm no number (2005)
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