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クールでジェントルな男 シェウン・クティ [西アフリカ]

20121120_Many Things.JPG   20121120_Rise.JPG

ようやくシェウン・クティを観られる。
11月20日渋谷クラブクアトロに、そんな思いでかけつけたお客さんは、ぼくだけじゃなかったはず。
09年のフジロック、11年の朝霧ジャム、12年のフジロックと、
すでに3度も来日しているシェウン一行ですけれど、
遠方のフェスまで足を伸ばせない人たちが、どれだけシェウンの単独公演を待ち望んでいたか。
朝の通勤ラッシュ並みに集まったお客さんの人数が、それを如実に表していました。

フェラ・クティをリアルタイムで聴いていたオヤジたちから、
最近のブームでアフロビートを知った若者まで、
幅広い年齢層の客がフロアを埋め尽くし、ステージが始まるのを今か今かと待ちわびる熱気に、
これはぜったいいいライヴになるぞという予感がしましたよ。

最初に登場したのは、バンマスの古老レカン・アニマシャウン。
フェラとクーラ・ロビトス時代から活動してきた、最古参メンバーの一人です。
かつてはバリトン・サックスを吹いていましたが、現在はキーボードを担当。
小柄なレカンがメンバー一人ひとりを紹介しながらステージに呼び込みます。
蛍光塗料を塗ったビーズがオシャレなシェケレを振る高齢のオコン・イヤンバから、
ドラムス、ベース、ギター×2の元フェラ&エジプト80のメンバーに、
トランペット、バリトン・サックス、女性ダンサーの新メンバーまで、
70歳代から20歳代までの各世代が揃う顔ぶれは、まるで伝統音楽の演奏会さながら。

フェラの遺産をしっかりと継承したバンド演奏を1曲やったあと、ついに登場したシェウン・クテイ。
いきなり始まったのが、急速調の「ゾンビ」なのには驚きました。
脳天を直撃する、斧で木をがしがしと割っていくようなドラムスの硬いビート。
トニー・アレンのポリリズミックなスウィング・ビートとは、まるで性質の違うドラミングです。
ビートがすごく硬いのに、ロック的にならないのはうねりまくるベースの存在で、
両者が組み合わさって、エジプト80の屋台骨となるぶっといグルーヴを生み出していました。

ミキシング・ボードで操作していた背の高い黒人は、ひょっとしてゴドウィン・ロギー?
スティール・パルスなどUKレゲエのプロデューサーとして有名なゴドウィンは、
シェウンのアルバムでレコーディング・エンジニアを務めていましたけれど、
ぼくにはサニー・アデのアイルランド盤での仕事が忘れられません。

「ゾンビ」のあと、セカンド作の曲を中心にステージは進みましたが、
どの曲も短めで、コンパクトにかっちり聞かせるのは、世界ツアーを重ねた経験の賜物でしょうね。
バンドの一体感も高く、シェウンの身のこなしも自信に満ちあふれていました。
両腕を後ろに組んで、腰をグラインドさせながらステップする姿なんて、オヤジの姿をほうふつとさせ、
特に後姿の肩から腰にかけてのシルエットは、フェラそっくり。

それでいて、「フェラ・ジュニア」といった小粒感がまったくないのは、
歌・サックス・ダンスに、フェラ以上の才能を発揮しているからでしょう。
偉大な父親を持ったことがプレッシャーとならず、
養分として育ったアフロビートをのびのびと演奏しつつ、
今の音楽としてアップデイトしているシェウンのパフォーマンスは、
音楽を継承する姿として理想的に思えます。

膝を前に曲げ腰を後ろに突き出し、肩を痙攣させるようにシェイクする、
ヨルバ独特のダンスをメンバーがちらっと披露するところもあって、
思わずサニー・アデとアフリカン・ビーツの昔のステージを思い出しました。
もっと広いステージだったら、メンバーとのかけあいのダンスもできただろうにと思い、
「狭いステージがきゅうくつだったでしょ?」とシェウンに訊いたら、
「小さいところも慣れてるから、大丈夫さ」とクールなお答え。
オフ・ステージでのシェウンはとてもジェントルで、
あんなにソフトな握手をするヨルバ人に、ぼくは初めて会った気がします。

Seun Kuti + Fela’s Egypt 80 "MANY THINGS" Tôt Ou Taud 8345-10585-2 (2008)
Seun Anikulapo Kuti & Egypt 80 "FROM AFRICA WITH FURY : RISE" Knitting Factory/Because Music
BEC5772820 (2011)
コメント(4) 

コメント 4

石田昌隆

ゴドウィン来てました!
by 石田昌隆 (2012-11-23 18:21) 

bunboni

あ、やっぱ、ゴドウィンでしたか!
なんかオーラ出てたもんなあ。シェウンのツアー、ずっと一緒なんですね。
by bunboni (2012-11-23 18:32) 

石田昌隆

聞いたら、ずっと一緒というわけではないそうです。サニー・アデのころから長年の仕事リスペクトですと言ったら喜んでいました。
by 石田昌隆 (2012-11-23 20:30) 

bunboni

そうなんですか。じゃあ、日本のオーディエンスはラッキーでしたね。
ゴドウィンが手がけることになったのは、マルタン・メソニエ人脈ですかね。
by bunboni (2012-11-23 20:41) 

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