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オリジナル音源で聴くクメール・オールディーズ [東南アジア]

REAB KAR CHOS BONG  Chlangden.JPG   REAB KAR CHOS BONG  Wat Phnom.JPG

ポル・ポト政権前のカンボジアで流行していたポップスを初めて聴いたのは、
内戦を逃れてアメリカに渡ったカンボジア人たちによって作られたレーベル、
クランデン・スタジオのCDが日本に入ってきた、93年の秋のことでした。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-11-21

クメール歌謡ってどんな音楽なのかと、興味シンシンでしたけれど、
ラテン歌謡、ソウル、ロカビリー、サイケ・ロックに影響を受けたナンバーや、
欧米のヒット・ソングや日本の歌謡曲のカヴァー曲といったレパートリーがほとんど。
カンボジアらしさを味わえるメロディやサウンドは案外少なく、ちょっと期待はずれでした。

同時代にはマレイシアのムラユやタイのルーククルンのように、
洋楽の影響を巧みに吸収した音楽があったのに、
カンボジアは、コピーの域を超えたオリジナリティを生み出せなかったんでしょうか。
中途半端な洋楽かぶれの曲ばかり入ったコンピレの山に、好奇心もすっかり萎えてしまいました。
その後、『カンボジアン・ロックス』なるコンピレなどもリリースされましたけれど、
ガレージ歌謡やサイケ・ロックを、辺境呼ばわりして面白がる傲慢さは不愉快なので無視。

そんなこんなですっかり忘れかけていたクメール・オールディーズだったんですが、
初のオリジナル音源によるリイシューというふれこみで、
ワット・プノン・プロダクションなるレーベルから新たに再リリースされていることを知り、
もう一度聴いてみようかという気になりました。
これまで復刻されてきたクメール・オールディーズは、
クランデン・スタジオも『カンボジアン・ロックス』も、
オリジナル音源にリズム・セクションなどを後からオーヴァー・ダブしたヴァージョンで、
余計な加工をしていない、当時のままの録音が聞けるのはこれが初めてだと思います。

まっさきに聴いてみたいと思ったのが、クランデン・スタジオの41番。
カンボジアの伝統楽器をフィーチャーし、クメール歌謡らしい佳曲を揃えた好編集盤で、
これのオリジナル録音なら聴きたいなあと期待したところ、ちゃんとカタログにありました。
トロー(二胡)やクラプー(鰐琴)などの伝統楽器の響きを活かした民謡調の曲は、
タイのルークトゥンの魅力に迫るもので、
クメール・オールディーズものでぼくはこのアルバムが一番好きです。
ワット・プノン・プロダクションのCDは、
クランデン・スタジオより2曲多く収録されているのも、嬉しいですね。

Wat Phnom Orchestra  PO PICH JEAB EY.JPG

さらに初めて聴いたアルバムで傑出していたのが、ワット・プノン・オーケストラ。
オルガン、ギター、ベース、ドラムスに、
木琴、小シンバル、太鼓などの伝統楽器を加えたインスト集で、
いわゆる歌のない歌謡曲といった内容。当時のスタジオ・ミュージシャンによる録音と思われます。

田園調というか民謡調のメロディ揃いで、
ぽかぽか春の小川のほとりでお弁当広げながら踊ってるような、
屈託の無い朗らかさがなんとも楽しく、ほっこりしたシアワセ感に包まれる演奏集です。
エレキ・バンドと木琴やトローとの共演もすごくしっくりしていて、
こういうサウンドこそ、カンボジアならではですよね。
ジャケこそガレージ・バンドふうですけれど、開けてビックリ、カンボジア風味濃厚のアルバムです。

Sinn Sisamouth, Ros Sereysothea, Chea Saveoun, Pan Ran, Meas Samoun "REAB KAR CHOS BONG" Chlangden Studio 041
Sinn Sisamouth, Ros Sereysothea, Chea Saveoun, Pan Ran, Meas Samoun "REAB KAR CHOS BONG" Wat Phnom Production 26
Wat Phnom Orchestra "PO PICH JEAB EY" Wat Phnom Production no number
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