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フィーリンの美学 セサル・ポルティージョ・デ・ラ・ルス [カリブ海]

セサル・ポルティージョ・デ・ラ・ルス 「伝説のフィーリン」.JPG

今年はフィーリンで盛り上がった1年となりましたねえ。
不肖ワタクシめもちょこっとだけお手伝いさせていただいた、
ホセー・アントニオ・メンデスの『フィーリンの真実』に続いて、
全国のフィーリン・ファンにビッグなプレゼントが届きましたよ。

それは、ホセー・アントニオ・メンデスとならぶフィーリンの名作曲家、
セサル・ポルティージョ・デ・ラ・ルスの日本企画によるフル・アルバム。
アオラ・コーポレーションの高橋政資さんが、
キューバの国営レコード会社エグレムにオファーして掘り出した音源集です。

セサル・ポルティージョ・デ・ラ・ルスの曲はキューバの名歌手のみならず、
ナット・キング・コールはじめ、カエターノ・ヴェローゾからクリスティーナ・アギレラに至る
世界の多くの歌手が歌ったことで、その名は広く知られています。
ところがセサル自身のアルバムといえば、LP時代に1枚のレコードすら残しておらず、
ゆいいつあるソロ・アルバムというと、CD時代になって91年に録音した、
ハバナのサン・ジョン・ホテル屋上のバー、ピコ・ブランコでのライヴ盤
“UN MOMENTO CON PORTILLO DE LA LUZ” があるだけ。

Portillo De La Luz  UN MOMENTO CON PORTILLO DE LA LUZ.JPG

もう1枚未入手で、“EL FEELING DE CESAR PORTILLO DE LA LUZ” というタイトルの
エグレム盤があったはずなんですが、このアルバムには他の歌手が歌ったものも入っていて、
完全なソロ・アルバムではなかったようです。

これまでごくわずかしか聴くことのできなかったセサルの自作自演集ゆえ、
エグレムの倉庫に眠っていた音源を掘り起こして、1枚のアルバムに仕上げたとは、まさしく快挙。
先に挙げたエグレム盤収録の8曲を除く14曲は、世界初CD化ですよ。
日本のファンは幸せですねえ。

エレクトリック・ギター一本を伴奏にした歌(弾き語りか?)の4曲、
60年代らしいオーケストラ伴奏の6曲、70年代以降のナイロン弦ギターをバックに歌った12曲と、
いずれもテンション・ノートの付いたコード使いと、
高度なハーモニーを伴うメロディばかりなんですけど、
それを実にさらりと、クールに歌ってこそのフィーリン。
ホセー・アントニオ・メンデスとはまた違った、セサルの朴訥とした個性もたっぷり味わえます。

70年代以降の歌で、社会主義政府寄りのメッセージ性を強く打ち出した曲では、
歌い口が妙にきっぱりとしていて、フィーリン独特の<陰>が消え失せてしまってますね。
こんなところにも、フィーリンという切ないラヴ・ソングの美学が証明されています。
不確かな男の愚かさや弱い男の憂いを歌うフィーリンで、
正義だのなんだのと、勇ましいことを歌っちゃあいけません。
そんなご立派な歌は、野暮なヌエバ・トローバのやるこってす。

今月末の29日には、世界でもっともフィーリンに詳しい原田尊志さんと高橋政資さんのご両名が、
音樂夜噺で対談することになっています。お二人ならではの、深いイイ話が聞けそうですね。
http://ongakuyobanashi.jp/
しかもそのあとは忘年会ということで、これまたお楽しみ。
2012年はフィーリンで年忘れでっす。

セサル・ポルティージョ・デ・ラ・ルス 「伝説のフィーリン」 ディスコ・カランバ CRACD246
Portillo De La Luz "UN MOMENTO CON PORTILLO DE LA LUZ" Pentagrama PCD193 (1992)
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