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21世紀のプロダクションで聴くヴォンコ フーン・トゥイ [東南アジア]

Huong Thuy  THUONG THAM.JPG

ヴェトナム現地のシーンが活況で、すっかり霞んでしまった越僑シーン。
昨年のハ・ヴィ以降、これといったアルバムがリリースされず、
なんか、ないかと旧作のカタログを眺めていたら、きらりと光るアルバムを見つけました。

それがこのフーン・トゥイという女性歌手の2作目にあたる06年のアルバム。
南部ヴィンロンの出身というので、「フォン・トゥイ」ではなく、
いちおう南部の発音で、「フーン・トゥイ」と書いておくことにします。

まだ若そうにお見受けしますが、ヴォンコやタンコをレパートリーに取り入れていて、
カイルオンの味も濃厚となっているところが妙味なアルバムです。
陥落前のサイゴンでカイルオンを歌っていたようなヴェテランならいざしらず、
74年生まれという世代の歌手で、これほど本格的なヴォンコやタンコを歌う人って、
かなり珍しいんじゃないでしょうか。

ギター・フィムロン、ダン・バウ(1弦琴)、ダン・キム(月琴)などの伴奏パートで聞かせる、
ヴォンコ独特のゆらぎ唱法は本格的なもので、
若さ漲る鋭さのある声とこぶし回しは、高い実力を感じさせます。
それもそのはず、フーン・トゥイは95年の民歌コンテスト全国大会の優勝者で、
ほかにも数多くのコンテストで賞を獲得したという経歴の持ち主。

さらに本作の聴きどころは、洋楽パートとヴェトナム弦楽パートがスイッチする
カイルオン独特の形式での、洋楽パートのモダンなサウンド。
従来のカイルオンの洋楽パートは、半世紀前のセンスを抜け出せない演奏がほとんどで、
場末のキャバレー・バンドふうだったり、グループサウンズふうだったりと、
まるでわざとダサい演出をしたギャグのように聞こえたものでした。

この洋楽パートがイマドキのポップスとなんら変わらないサウンドで聴けるのは新味で、
いままでがあまりにダサかったといえばそれまでですけれど、
これなら初めてカイルオンのサウンドに触れる人にも、珍妙な印象を持たずにすむかもしれません。
といっても、カイルオンの接木形式を初体験する人には、これでもビックリするでしょうけれど。

フーン・トゥイのソロ・デビューは98年、越僑レーベルのトゥイ・ガからで、
なぜヴェトナム現地のレコード会社からデビューしなかったのか不思議な気もしますが、
こういうヴォンコやタンコを歌うカイルオン系の歌手は、
越僑の地の方が需要があるのかもしれませんね。
その後フーン・トゥイは03年にアメリカに渡り、越僑歌手として活躍していて、
06年に2作目の本作、08年に3作目、10年に4作目を出しています。
21世紀のプロダクションで聴くヴォンコは、この2作目が一番おすすめできます。

Hương Thủy "THƯƠNG THẦM" Thúy Nga TNCD376 (2006)
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