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クメール歌謡発展型としてのヒップ・ポップ クメール・ヒップ・ホップ [東南アジア]

Cream of The Krop.JPG

いつもどおりプレイヤーのトレイにディスクをセットしてボタンを押したら、
見たことのない表示が画面に現れ、???
再生ボタンを押すと、ちゃんと音楽が流れてくるけれども。
見慣れない表示を読んでみると、このCD、どうやらMP3らしい。
なんと、初めてMP3のCDを買ってしまいましたよ。
記念すべき初MP3CDは、カンボジアのヒップ・ホップなのでありました。

一部でウワサのクメール・ヒップ・ホップ、
以前聴いたのは玉石混淆で手が伸びませんでしたが、今度のはなかなかの粒ぞろい。
トロー・チェー(二胡)に太鼓や小型シンバルなどの伝統楽器をフィーチャーしたトラックや、
オールド・スクールな60年代クメール歌謡をバックトラックにしたものなどなど、
カンボジアの音楽遺産をたっぷり活用したトラックが、なんと33トラックも詰め込まれています。

う~ん、こりゃあ、おもしろいですねえ。
モロッコのフナイールと並ぶ民族派ヒップ・ホップといえそうですけど、
フナイールのように、イッパツ聴いただけでカッコイイ!と飛びつくツカミの強さはなく、
もっとレイドバックしてるというか、クメール語の語感がの~んびりと間延びして聞こえます。
サウンドのアジアン・テイストなチープさも親しみやすく、和めますね。
もっとも、ヒップ・ホップで和んでいいものかどうか、よくわかりませんが。

クラップ・ヤ・ハンズは、プロデューサーのソック“クリーム”ヴィサルが05年に設立した、
カンボジア初にしてゆいいつの、ヒップ・ホップ・インディ・レーベル。
レーベル発足から7年の間に制作したトラックを集大成したのが、本作とのこと。
クリームは言っています。
かつてのクメール歌謡の先達がカンボジアの伝統音楽とラテン音楽をミックスさせたり、
ロックを吸収したように、自分たちの世代はラップを取り入れるのだと。

その発言からも、こうしたミクスチャーが意図したものであることは歴然ですね。
自分たちの伝統文化や歴史に関心を持たないイマドキのカンボジアの若者が、
伝統サウンドを取り入れたトラックメイクで、少しでも古典音楽に興味を持ってくれたらと、
クリームは願っているとのこと。
その意気たるや良しで、そんな初心が続いてくれればいいんですけれども。

というのも、モロッコのフナイールの方は中心人物を失い、
新作“AL BASMA” ががっかりな出来でしたからねえ。
インターナショナル・マーケットへ色気を出したのが裏目に出たのか、
07年の傑作“YED EL HENNA ” の衝撃は、微塵もありませんでした。
クメール・ヒップ・ホップには国際標準を目指すことなく、土着化を図ってもらいたいものです。

Lisha, Yavady, Yungsterz, One, Gang, Pou Khlaing, Aping, Ago, Kate, Kelly, Khmer Rap Boyz, Kdep, Theany, Tum
"CREAM OF THE KROP : KLAP YA HANDZ PRESENTS KHMER HIP-HOP"
Klap Ya Handz no number (2010)
コメント(2) 

コメント 2

菊地達也

プノンペンではなかなかCDが集められずに焦りましたが、なんとか持ち帰ることが出来て、さらにこうしたきちんとした文章として形になって良かったです。引き合いにされたのがフナイールというのもばっちりだと思います。そして土着化して欲しいです!
by 菊地達也 (2013-02-23 17:12) 

bunboni

世界各地からお宝CDを持ち帰ってきてくださる方のおかげで、
いつも楽しませてもらって、こちらこそありがとうございます。
ヒップホップに興味のないぼくでも、フナイールやクメール・ヒップホップにはヤられます。ただ瞬間芸ぽくなりがちなので、面白さが持続すればいいんですけども。

by bunboni (2013-02-23 19:27) 

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