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コモロの月 ムウェジ・ワック [インド洋]

Mwezi WaQ..JPG

インド洋に浮かぶ群島のコモロというと、忘れられない写真があります。
夕闇に落ちていく港を広角レンズで切り取った遠景写真で、海沿いの白く大きなモスクと、
停泊している舟が夕陽の残照を浴びて黄金色に光る様子が、強く目に焼きついています。
アフリカとアラブとアジアが海のシルクロードで結ばれたイスラームの島という
エキゾティックなイメージは、ザンジバルとも共通していますが、
ザンジバルのように観光化されていないコモロは、
どこかうらぶれた貧しさを隠せず、その写真もどこか儚く、哀しくみえました。

そんなコモロの日常を活写したムウェジ・ワックのアルバムは、
コモロの歴史や文化を継承した、質の高いポップ・アルバムに仕上がっています。
漁に向かう男が歌うワークソングをフィールド・レコーディングした曲に始まり、
海の男を象徴する逞しいポリフォニー・コーラスや、
ハチロクのはじけるビートにのったダンス・チューンを聞かせます。
ほかにも、住民の多くが信仰するスーフィーのチャントを取り入れた曲や、
70年代のターラブのヒット曲のカヴァーなども収め、
コモロ文化の多様性がにじみ出たバラエティ豊かなアルバムとなっています。

<コモロの月>を意味するムウェジ・ワックは、中高年メンバー9人によるグループ。
メンバーの中にバコがいたのには、おやと思いました。
バコは、フランスのコバルトから00年に“QUESTIONS” という傑作を出した
マヨッテ島出身のシンガー・ソングライター。

Baco.JPG

“QUESTIONS” では、ンゴドロやンゴマなどのコモロの伝統リズムを生かしながら、
レゲエやフラメンコも取り入れたモダンなコモロ音楽を聞かせていましたが、
本作はより伝統寄りのサウンド・アプローチによって、
アンディ・パラシオのガリフナ音楽とも共通する、ディープなアウラを獲得しています。

メンバーが操る楽器も、マダガスカルのマルヴァニと同じ起源を持つ箱琴のンゼンゼや、
アラブのガンブースを起源とする5弦楽器のガブシなど、
アジアとアラブから流れ着いてコモロで土着化した楽器がフィーチャーされ、
コモロ音楽を知るのにも絶好の1枚といえます。

Mwezi WaQ. "COMORES : CHANTS DE LUNE ET D’ESPÉRANCE" Buda Musique 3721042 (2012)
Baco "QUESTIONS" Cobalt 09300-2 (2000)
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