SSブログ

50年代後半のアマリア・ロドリゲス [南ヨーロッパ]

Amalia Rodriguez  ANTOLOGIA.JPG

アマリア・ロドリゲス全キャリアの中で、ゆいいつ未CD化の空白期間だった50年代後半の録音を、
まとめて100曲復刻した4枚組アルバムがリリースされました。
最近はやりのライノの廉価版ボックス同様、紙パックに4枚の紙ジャケを収めた仕様で、
CD1枚と変わらない価格設定という値打ちもんに、即飛びついちゃいました。

アマリアが62年以降リリースした数多くのLPは、これまで何度も再発されているし、
デビュー録音の45年のブラジル、リオ・デ・ジャネイロ録音16曲は、
95年にポルトガルEMIがCD化しています。
初期の録音は長い間未復刻のままでしたけれど、
07年にCNMが46~54年録音を5枚のCDに分けて復刻しました。
今回セヴン・ミューゼス・ミュージックブックスという
ポルトガルのレコード会社が復刻した100曲は、これに続く録音時期のリイシューとなるわけです。

ただ、最初に不満を言っておくと、CNMが5枚のCDで復刻した時と同じで、
収録が録音順ではなく、あまり意味があるとも思えないテーマ別編集となっていること。
これじゃあ、アマリアの歌の成長ぶりを録音順に味わいたいと思っても不可能。
録音年などのデータの記載もないので、リッピングして並べ替えることもできません。
ゆいいつマルPマークで年号が曲名のあとに表示されているので、
録音年と一致するかどうかはわかりませんが、おおよその録音年は類推できますけれども。

あ~あ、やってくれるよなあ、ポルトガル人。
どうして国を代表する大歌手の音楽遺産に対して、こういう仕打ちをするんですかねえ。
前のCNMが出した5枚のCDは、
オフィス・サンビーニャが付けてくれた田中勝則さんの詳細な解説のおかげで、
リッピングして録音順に並べ直して聴くこともできたんですけれども。

とまあ、編集は大不満なわけですが、中身は聴きどころ満載ですよ。
なんたって、アマリア・ロドリゲスが円熟に向かう絶頂期ですからねえ。
“Foi Deus (神様)” “Ai Mouraria (アイ・モウラリア)”
“Noite De Santo Antonio (サント・アントニオの夜)”
“Fado Dos Fados (ファドの中のファド)”
などの初期代表曲の再演ヴァージョンでは、ぐっと成熟した歌いぶりが味わえます。

また面白かったのが、映画の挿入歌らしきフランス語で歌った曲。
これがアマリアにしては珍しく、フランス語の発音がうまくコブシにのらず、
歌いにくそうにしているのがよくわかるんですね。
上手くないアマリアの歌が聴けるっていうのも珍しいというか、
聴いててハラハラすることなんて、アマリアにはめったにないこと。
歌いぶりにホレボレとして、のめりこむように耳が吸い寄せられるのが
アマリアのファドと、相場がきまってますからねえ。
フランス語のリズムとファドの相性がよくないという、証明かもしれません。
反対に、スペイン語で歌った曲のノリは、ばっちりですね。

また、ドリヴァル・カイーミの“Saudade De Itapoã (イタポアーンの思い出)”
を歌っているのも驚き。
アマリアは声を張って歌うものの、案外歌の表情は淡々としていて、
カイーミが歌うようなドラマを表現できておらず、この仕上がりはちょっと期待はずれ。
アマリアが初期に歌ったブラジルの曲では、ジェラルド・ペレイラ作の名曲サンバ
“Falsa Baiana (偽りのバイーア女)” があるんですけど、これはいまだに未復刻。
いつの日にか聴いてみたいもんですねえ。

あと、このボックスには56年のライヴ“AMÁLIA NO OLYMPIA” 全曲も収録されています。
不満はもろもろあるものの、ここでしか聴けない音源の数々、ファンならやはり買いでしょう。
特別限定版とあるので、初回プレスのみで売り切れ御免となること必至。お見逃し無く。

Amália Rodrigues "ANTOLOGIA" Seven Muses Musicbooks SM001
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。