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マロヤを生かしたシンガー・ソングライター ファブリース・ルグロ [インド洋]

Fabrice Legros  NÉNIN.JPG

すごいな、レユニオン。

マロヤ再興に沸き立って、若い才能がぞくぞくと現れているんですね。
去年来日したランディゴのような伝統寄りのマロヤを演奏するグループから、
現地で圧倒的人気のダヴィ・シカールのように、コンテンポラリーなサウンドの中に
マロヤをブレンドしてみせるシンガー・ソングライターまで、若いレユニオン人たちが
マロヤの伝統を多彩な方法でブラッシュ・アップしているのには、目を見張ります。

そうした中で、ぼくがもっとも買っているのがメディ・ジェルヴィル。
ジャズ・ピアニストとしてマロヤ・ジャズを進化させるだけでなく、
一級品のクレオール・ポップに仕上げるセンスは、
これまでのレユニオンのミュージシャンにない抜きん出た才能を感じさせます。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-04-15

とりわけ11年改訂作“FO KRONM LA VI” は、ルーツ・オリエンテッドでありつつ
ハイブリッドなミクスチャー・センスをいかんなく発揮した快作。
これまでレユニオンのどんなミュージシャンも到達できなかった、
高度なレヴェルの音楽性を獲得した歴史的傑作です。
『定盤1000』のアフリカ音楽の40枚にも、
レユニオンを代表する1枚として迷うことなく選んだんですけど、
輸入盤も入ってこなければ、日本盤もいっこうに出ないし、
まったく知られないままとなっているのが、くやしいったらありません。

そのメディ・ジェルヴィルがプロデュースに加わったシンガー・ソングライター、
ファブリース・ルグロが08年にリリースしたデビュー作を聴いたら、
これがまたとびっきりの快作で、驚くやら嬉しいやら。
コンテンポラリーなサウンドの中に、しっかりとマロヤの伝統を活かす一方、
メランコリックなソングライティングやソフトな歌い口は、
広くポピュラリティを得られる資質の持ち主といえます。
ラウル・ミドンがマロヤを歌ったみたいな曲もあったりして、
アピール次第で十分ヒットも期待できる人ですよ。

経歴を調べてみると、69年、レユニオン島南部の町サン・ピエールの生まれ。
90年から94年までレゲエ・バンドのバスティエにサックス奏者として参加したあと、
95年から1年間パリへ渡って音楽を勉強し直し、
レユニオン帰郷後、メディ・ジェルヴィルなどのグループで活動してきたそうです。

これまで書き溜めてきた曲を歌ったこのデビュー作は、
メディ・ジェルヴィルのバンド・メンバーを中心に20人近いミュージシャンが参加。
自主制作に近いインディ作品ながら、そのクオリティはハイ・レヴェルで、
世界的なマーケットに十分耐えうる内容となっています。
ぜひ流通を良くして、多くの人に届けてほしい作品ですね。

Fabrice Legros "NÉNIN" no label FL001.08 (2008)
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