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コラのグリオの至芸 バトゥル・セク・クヤテ [西アフリカ]

Sekou Batourou Kouyate.JPG

うわぁ、懐かしい!
その昔さんざん聴いた、コラの代表的名盤がCD化されましたよ。
しょうもないアフロ・ロックの駄盤ばかりリイシューしているオランダのDJ系レーベルが、
こんなバリバリの伝統アルバムを復刻するとは、いったいどういう風の吹き回しでしょう?
アフリカ音楽を夢中で聴き始めた70年代、ぼくがもっとも惚れ込んだコラの名作のひとつです。

バトゥル・セク・クヤテはマリを代表するコラの名グリオで、
名歌手ファンタ・ダンバの伴奏を務めたことでも忘れられない人です。
このアルバムは、76年にアビジャンで録音されたバトゥルのソロ演奏。
当時コラのアルバムといえば、
ヨーロッパのレコード会社が西洋人向けに制作したものがほとんどで、
アフリカ人のアフリカ人によるアフリカ人のためのコラのアルバムというのは、
かなり珍しかったんですよねえ。

バトゥルはこのアルバムで、
1台のコラを弾いているとは思えぬ複雑なフィンガリングを披露していて、
まるで2台のコラがデュオ演奏しているように聞こえます。
二人の人間が弾いているように聞こえるところは、
ロバート・ジョンスンやブラインド・ブレイクといった
天才ブルース・ギタリストのプレイにも相通じますね。
コラの弦を力強くはじく一音一音の粒立ちの良さに加え、
つっかかるようなアクセントで流麗なフレーズを早弾きするプレイなど、息を呑みます。

超絶のテクニックを持ちながらも、
演奏が技巧的になりすぎず、おおらかなグルーヴを持っているのは、
コラがまだ歌の伴奏楽器であり、ソロ演奏をすることのなかった時代ならではの至芸だからでしょう。
この当時、ヨーロッパ人たちからコラ演奏のレコーディングを求められたグリオたちは、
普通なら歌なしの演奏など考えられないため、口々にそのやりにくさをこぼしたといいます。
西アフリカのグリオの社会において、コラ演奏は音楽として機能していたわけではなく、
歴史の語り部の脇役だったのだから、その違和感はさぞかし大きかったんでしょうね。

コラが独立したソロ楽器としてプレイされるようになったのは、
トゥマニ・ジャバテが登場して活躍する87年以降のこと。
バトゥル・セク・クヤテの本作はわずか30分足らずのアルバムとはいえ、
古きマンデ社会のグリオの名人芸を記録した、珠玉の名作といえます。

Batourou Sekou Kouyate "SEKOU BATOUROU KOUYATE ET SA CORA" Tembo TEMCD8101 (1976)
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