グリオの継承 シディキ・ジャバテ [西アフリカ]
バトゥル・セク・クヤテのコラの独奏アルバムと一緒によく愛聴したアルバムに、
ドイツ、ベーレンライター=ムジカフォンのアルバムがあります。
こちらはバトゥル・セク・クヤテとシディキ・ジャバテの二重奏を中心に、
ジェリマディ・シソコとンファ・ジャバテが相方を務めた内容で、
古手のアフリカ音楽ファンなら知らぬ人のない、コラ演奏の名盤中の名盤。
CD時代になってからは、フランスのブダがリイシューしました。
う~ん、いまやこういうコラ演奏を聴くと、古典のように響きますね。
滋味に富むというか、最近の若いコラのプレイヤーとはぜんぜん次元の違う演奏を聞かせます。
今来日しているバラケ・シソコもそうなんだけど、
イマドキのコラ弾きはリズムが弱くって、フレーズが垂れ流しになっちゃうんですよね。
なんだかこれじゃニュー・エイジみたいで、ぼくは気持ち悪くってしょうがありません。
昔のコラ弾きはもっとビートが強くって、ガッツがありましたよ。
たとえば、このアルバムでバトゥル・セク・クヤテとともに、
素晴らしい弦さばきを聞かせるシディキ・ジャバテがそうですね。
流麗な早弾きのパートと、十分に間を取りタメの利いたリズム感で弾くパートを
緩急を利かせて弾くところは、茶の湯に通ずる美学を覚えます。
シディキは、70代以上続くコラのグリオの家系に生まれ、「コラの王」の異名をとった名手。
20世紀最高のグリオ歌手、ギネアのソリ・カンジャ・クヤテの伴奏を務めたことで名高く、
いまではトゥマニ・ジャバテのお父さんとしても知られています。
そういえば、初めて息子のトゥマニの演奏を聞いた時、
シディキの演奏スタイルとまったく違うのが不思議でした。
だいぶあとになってから、トゥマニのインタビュー記事を読み、
独学でコラを覚えたということを知り、あ、だからかと納得したことを覚えています。
なるほどシディキから習うことなく独学で覚えたのなら、プレイが似ていないのも当然です。
しかし、グリオは世襲制と聞いていたので、能や歌舞伎の世界のように、
子供のうちから英才教育を施されるものとばかり思っていたのが、
シディキから教わらなかったという答えは意外でした。
グリオの家系、それも70代以上も続く由緒正しい家に育ったのだから、
当然父親から厳しく特訓でも受けたものとばかり思ってたんですけどねえ。
世襲といってもいろいろなんですね。
修行を積ませるため、他のグリオのところへ送り込むということも、よくあるようだし。
そういえば、幼い頃のトゥマニと
シディキが並んでいる写真をジャケットに使った、
シディキの晩年のアルバムがありましたっけ。
ちっちゃな子供用のコラを持っている
トゥマニの可愛いことといったら!
87年にイギリスでレコーディングされたこのアルバムでは、
ソロ・デビュー間もないトゥマニが
アンサンブルの一員に参加してシディキと共演しています。
当時このアルバムを聴いていた頃は、
シディキから時に厳しく、時に優しく
コラを仕込まれてたんだろうなあなんて思ってたんですけど、
真実は別なところにあったんですね。
[LP] Sidiki Diabaté, Batourou Sékou Kouyaté,
Djelimadi Sissoko, N'Fa Diabaté
"CORDES ANCIENNES"
Bärenreiter-Musicaphon BM30L2505 (1970)
Sidiki Diabaté, Batourou Sékou Kouyaté,
Djelimadi Sissoko, N'Fa Diabaté
"CORDES ANCIENNES"
Buda Musique 1977822 (1970)
[LP] Sidiki Diabaté and Ensemble "BA TOGOMA"
Rogue FMS/NSA001 (1987)
2013-05-18 00:00
コメント(2)
CDでリイシューされたんですね。あまり熱心なコレクターではないのでLPは買いそびれたままでした。海外のサイトでようやくCD買いましたがジャケットはLPの方がカッコイイですね。それにしてもこういう音楽には最近ホントなかなか出会えません。力強く滋味に溢れ聴き進むほどに体の芯から温めてくれるような演奏。バズマナ・シソコもいつかリイシューしてくれないかな。
by niam-niam (2013-10-15 18:28)
おっしゃるとおりですねえ。マリ国歌の作曲家でもあるバズマナ・シソコの復刻は、マリという国にとっても責務だと思うんですが。
by bunboni (2013-10-15 20:04)