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ロンドンでミックスされたジュジュとハイライフ アンブローズ・キャンベル [西アフリカ]

London Is The Place For Me 5 & 6.JPG   Ambrose Adekoya Campbell.JPG

ひさしぶりにリリースされた、イギリス、オネスト・ジョンズの
『ロンドンはおいら向きの場所』シリーズの第5・6集。今回も聴きどころ満載ですね。
アンブローズ・キャンベル率いるウェスト・アフリカン・リズム・ブラザーズの曲も、
100%ハイライフあり、ジュジュ・ハイライフあり、100%ジュジュありと、
曲ごとに違う餡の練り込み具合が、ファンにはたまりません。

アンブローズ・キャンベル(本名オラディプポ・アデコヤ)の名を知ったのは、
サニー・アデが84年に来日した時のインタビュー記事が最初でした。
アデよりずっと上の世代のジュジュ・ミュージシャンで、
グランド・ピアノまで導入していたという発言に、
どんなサウンドのジュジュなんだろうと興味をそそられたものです。

いまでは『ロンドンはおいら向きの場所』第3集で、
アンブローズの50年代録音を容易に聴くことができますけど、
ぼくがはじめてアンブローズの音楽と接することができたのは、
アデの記事から5年以上も経ってからのこと。
アンブローズがウェスト・アフリカン・リズム・ブラザーズを率いて、
ロンドンで活動していた時代の録音を編集したイギリスのメロディスク盤を入手し、
ようやく聴くことができました。

Highlife MLP518.JPG   Highlife Music Volume Two MLP519.JPG
Highlife Music  12-131.JPG   Highlife Music Volume 2 MLP12-134.JPG

このメロディスク盤は、アインデ・バカレやフラッシュ・ドミンチといった、
イギリスに渡ったナイジェリア人ミュージシャンによる
ジュジュやハイライフの魅惑的な演奏が詰まった、メイド・イン・ロンドンならではの名盤でした。
このアルバムを聴くと、アンブローズがナイジェリア本国のジュジュとはかなり肌合いの異なる、
カリプソなどを取り入れたユニークなビッグ・バンド・サウンドを持っていたことがわかります。
アンブローズがバンド活動を本格的にスタートさせたのは大戦後のイギリスだったため、
メンバー全員がナイジェリア出身ではなく、
バルバドス島出身のトランペット奏者とサックス奏者が在籍していて、
ジュジュにカリブ海の音楽が自然とミックスされたのでした。

しかし、アデの発言にあった、グランド・ピアノを導入していたというのは
もう少し後のことで、66年の初リーダー作のことを指していたようです。
50年代のロンドンのジャズ・シーンでは、アフロ・キューバン・ジャズと
西アフリカのハイライフが注目の的となっており、
人種や出身を越えたミュージシャン同士の交流が盛んに行われていました。
アンブローズはこれらのジャズ・コミュニティとも深く関わっていて、
60年代に入るとウェスト・アフリカン・リズム・ブラザーズとは別に、
カリブ海出身のミュージシャンとともに活動をし、初ソロ作を制作します。

Ambrose Campbell  Highlife Today.JPG

このアルバムでは、メロディスク録音以上にアフリカとカリブがミックスしたサウンドが聞け、
タイトルにも「ハイ・ライフ」とあるとおり、ジュジュとハイライフとカリプソが渾然一体となった
アンブローズのユニークな音楽性が披露されています。
このLPに収録されている2曲が、『ロンドンはおいら向きの場所』第2集で聴けますよ。

このあとのアンブローズの活動がまた面白いんですけど、72年にアメリカへ渡り、
レオン・ラッセルのバンドにパーカッショニストとして参加、ツアーに出るんですね。
なんでレオン・ラッセルだったのか、よくわかりませんが、73年には来日もしています。
えぇ?と思ったロック・ファンのあなた。“LIVE IN JAPAN” のクレジットをご覧あれ。
レオン・ラッセルとの付き合いは長く続き、パーカッションのみならずドラムスも務め、
レオン・ラッセルとウィリー・ネルソンとの79年の共演作はじめ、
84年の“SOLID STATE” まで活動を共にしています。

その後2004年にイギリスへ戻り、2006年、86歳で生涯を閉じました。
経歴を眺めただけでも、これほどユニークな音楽人生を歩んだ人も珍しく、
生前に自叙伝を残してくれたのなら、
さぞ興味深い音楽史の舞台裏を知ることができたに違いありません。

V.A. "LONDON IS THE PLACE FOR ME 5 & 6 : THE MUSIC OF YOUNG BLACK LONDON" Honest Jons HJRCD61
Ambrose Adekoya Campbell "LONDON IS THE PLACE FOR ME 3" Honest Jons HJRCD21
[10インチ] West African Rhythm Brothers, Ayinde Bakare, Nat Atkins and others "HIGHLIFE MUSIC" Melodisc MLP518
[10インチ] West African Rhythm Brothers, Ayinde Bakare, Nat Atkins and others "HIGHLIFE MUSIC VOLUME TWO" Melodisc MLP519
[LP] Ambrose Campbell & The West African Rhythm Brothers, Flash Domincii and The Fabulous Supersonics
"HIGHLIFE MUSIC" Melodisc MLP12-131
[LP] Ambrose Campbell, Brewster Hughes, Ayinde Bakare, Rans Red Spot Band, Nat Atkins and Edmundo Ros Orchestra
"HIGHLIFE MUSIC VOLUME 2" Melodisc MLP12-134
[LP] Ambrose Campbell "HIGH LIFE TODAY" Columbia/EMI SX6081 (1966)
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