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永遠のクロンチョン トゥティ・マルヤティ [東南アジア]

Tuti Maryati  ALBUM KERONCONG ABADI VOL.1.JPG

ネティの『いにしえのクロンチョン』、聴いてます?
すっかりヘヴィー・ローテーション盤となっているんですが、
スピーカーからしっとりとしたその歌声が流れてくるたび、
甘い快感に襲われ、腰が抜けそうになります。これを至福と言わずなんと言いましょう。
ほんと、最高の女性歌手ですね。

洋風な唱法を巧みに溶け込ませたネティの歌い口は、
やはり50年代という時代だからこその味わいでしょうねえ。
現代のクロンチョン歌手には求め得ないセンスゆえに、
「いにしえのクロンチョン」なわけですけれど、
一方、現代のクロンチョンで、一番味わい歌を聞かせてくれる人といったら、
ぼくはトゥティ・マルヤティを推します。
伝統クロンチョンの歌手には珍しい、スラウェシ島出身のヴェテラン女性歌手です。

インドネシア伝統音楽専門のレコード会社グマ・ナダ・プルティウィから、
コンスタンスにアルバムをリリースし続けていて、
トゥティ・トゥリ・スジャの旧名義だった88年のアルバムから今回の新作まで、
手元には5枚のアルバムがあります。

同じグマ・ナダ・プルティウィから数多くアルバムをリリースしている人に
スンダリ・スコチョがいますけど、スンダリって、どうも優等生的で、
伝統クロンチョンを歌っても、ポップ・クロンチョンを歌っても変わりなく、
物足りなさを覚えてしまうんですよね。

Tuti Maryati    LANGGAM SUNDA NOSTALGIA.JPG

そこへいくとトゥティは、アルバムの企画ごと
さまざまに表情を変えた歌声を聞かせてくれて、毎度ひきつけられてしまいます。
特に忘れられないのが、ランガム・スンダというユニークな企画を立てた08年作。
ランガム・ジャワにスンダ音楽をミックスさせるという大胆な音楽的冒険を仕掛けた、
オルケス・ビンタン・ジャカルタのチェロ奏者マントースのアイディア豊かなアレンジに応えて、
まるでハタチ台のようなハツラツとした歌声をきかせたトゥティが絶品でした。

最新作は、おなじみ「ブンガワン・ソロ」も歌った伝統クロンチョンのスタンダード集。
慈しみ深いトゥティの歌声にはほんのりとした色気も感じられて、
五十台後半とは思えませんねえ。まさに円熟の歌声です。

今回の伴奏は、フルート、ヴァイオリン、チュック、チャック、ギター、ベースの
オーソドックスな編成。これがなかなか味のある演奏を聞かせてくれるんです。
左チャンネルから聞こえてくる、チャックのリズム・カッティングの
ひっかかるような弦の響きや、スウィングすることをあえて拒むようなビート感、
そして1曲のなかで何度もリズム・パターンを変えるなど、その技に耳奪われます。

一方、ヴァイオリンとフルートは、いかにも名手らしくなめらかな甘い調べを奏でていて、
チュック、チャック、ギターの粒立ちのいい音で細かなリズム感を生み出すのと、
絶妙なコンストラトを生み出しています。
トゥティの歌声と楽団の演奏とが渾然一体となって、
歌と演奏同時に耳を奪われる、極上のクロンチョンです。

Tuti Maryati "ALBUM KERONCONG ABADI VOL.1" Gema Nada Pertiwi CMNP418 (2013)
Tuti Maryati "LANGGAM SUNDA NOSTALGIA" Gema Nada Pertiwi CMNP391 (2008)
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