揺れるソプラノのメリスマ ティギスト・ウォーイソ [東アフリカ]
わぉ! ティギスト・ウォーイソの新作っ!
ヒップ・ホップみたいなジャケットだったので、最初気付きませんでしたよ。
05年作の“KEAKEME BELAYE” を聴いて、
いっぺんでトリコになったエチオピアの若手女性シンガーです。
ベズネシュ・ベケレやアスター・アウェケの系譜に連なる個性的な節回しを持つ人で、
ハイ・トーンで揺らすこぶし使いが絶妙なんですね。
明瞭なディクションと滑舌よくビートに乗せていく歌いっぷりに、
ホレボレとしたもんです。若そうに見えるけど、すげえウマい人だなあと。
語尾をしゃくりあげる節回しも、なんともセクシーです。
そんなティギストの独特の唱法が、今作ではさらに磨きがかかりました。
シャープなソプラノ・ヴォイスに強弱をつけ、独特の抑揚で歌うメリスマが鮮やか。
細い声でノドを絞るようにシャウトしても、ちっとも耳障りでないのは、
ほとばしる熱情がきちんと抑制されているからでしょうね。
プロダクションも上出来で、イェッシ・デメラシュのデビュー作に劣らぬ出来。
打ち込みをベースとしつつも、リズムは多彩だし、よく練られたアレンジで飽きさせません。
ハウスやヒップ・ホップR&Bなどもさらりと消化していて、
クールな四つ打ちのバック・トラックにのせて、
エモーショナルなヴォーカルが炸裂するグルーヴィーさには圧倒されました。
クラブでプレイしたら、フロアが盛り上がることウケアイです。
60年代黄金時代の歌手兼ピアニストのギルマ・ベイェネが歌ったブルースのカヴァーや、
ティギストの出身である、エチオピア南部ワライタの伝統リズムを取り入れた曲も聴きもの。
エチオピアのダンスというと、北部アムハラのエスケスタのように、
首や肩や胸などの上半身を細かくシェイクするのが特徴ですけど、
ワライタのダンスは、M.C.ハマーのダンスと比べられたりするように、
軽快でコミカルな動きとダイナミックさをあわせもったもので、よりブラックネスを感じさせます。
エチオピアは南に下るほど、下半身の動きが激しくなるんですね。
モダンなセンスを発揮したコンテンポラリーなエチオ・ポップ・サウンドのなかに、
ティギストの揺れるソプラノのメリスマが発揮された逸品です。
Tigist Weyeso "FERAHU" Habesha no number (2012)
Tigist Woyiso "KEAKEME BELAYE" Ethio-US Entertainment no number (2005)
2013-07-07 00:00
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