そよ風のリズム、愛の歌 ナンシー・ヴィエイラ [西アフリカ]
カーボ・ヴェルデ新世代の歌手で今もっとも魅力的な女性歌手、
ナンシー・ヴィエイラが思いがけず来日してくれました。
日本盤リリースに合わせたプロモーション来日で、
おととい代官山の蔦屋書店で行われた、CD発売記念のインストア・ライヴを観てきました。
ナンシーのアルバムというと、
07年の3作目“LUS” でのフレッシュな歌声が忘れられません。
アルバムの始めと終わりに、ペルーの黒人音楽とキューバの古典歌曲を取り上げるなど、
従来のカーボ・ヴェルデのミュージシャンにはみられない意欲作となっていました。
今回日本盤で出た11年作の“NO AMÁ” は、力の抜けた歌唱が鮮やかでした。
こんなにさりげなく歌える人って、カーボ・ヴェルデはおろか、
同じポルトガル語圏のブラジルにも、ちょっと見当たらない気がします。
静かにつぶやくような歌い口から、さっぱりとした風味の香るアルバムで、
違いのわかる大人の音楽好きにこそ、聴いて欲しいアルバムです。
ちなみに、最初このアルバムが出た時、どこぞの輸入CDショップの宣伝文句に
「セザリア・エヴォーラの再来」と書かれているのを見つけ、怒り心頭に発したものでした。
カーボ・ヴェルデの歌手というだけで、どうせ中身を聴きもせず、
セザリア・エヴォーラを持ち出したんでしょうけど、
朴訥なだけで味もへったくれもないセザリアの歌と、ナンシーの歌が同じに聞こえるようなら、
その人は音楽を語る資格なんぞありません。
カーボ・ヴェルデの音楽を語る時に、なにかというとセザリア・エヴォーラを持ち出す
ナントカの一つ覚え、いい加減やめてもらいたいもんです(怒)。
ナンシーの歌には「情け」がありますね。
それがカーボ・ヴェルデ人にとっての郷愁、ソダーデの感覚なんでしょうけど、
日本人の耳には、心根の優しい女ごころが伝わってくるようで、胸に染み入ります。
ライヴで体験して、CDで聴く以上にいい声なのに、ホレボレとしてしまいました。
ナンシーの柔らかでデリケイトな歌い口には<ヨーロッパ>が、
太い幹を思わせるしっかりとした芯のある歌声には<アフリカ>が溶け込んでいます。
大西洋の波に洗われた海風の薫る歌いぶりは、
カーボ・ヴェルデのクリオーロが生んだ、最高の結晶です。
もうセザリア・エヴォーラの名前は忘れましょう。
Nancy Vieira "LUS" HM Música HM004CD (2007)
Nancy Vieira "NO AMÁ" Lusafrica 024162 (2011)
2013-08-04 00:00
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