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伝統マロヤをアイデンティファイした新世代 サルム・トラディシオン [インド洋]

Salem Tradition Waliwa.JPGSalem Tradition  KRIE.JPGSalem Tradition  FANM.JPG

インターFM「ザ・セレクター」の次回テーマは、「レユニオン音楽歴史物語」。
インド洋に浮かぶレユニオン島音楽の戦前録音から現在までの歩みを追いながら、
古くから歌謡化して発展してきたセガと、
近年再評価されるようになったマロヤの17曲を選曲しました。

選曲をしていてあらためて感じ入ったのが、伝統マロヤの魅力です。
もう7年も前の話になりますけれど、マロヤの重鎮グランムン・レレの日本盤解説(*)で、
「クレオール文化が生んだ豊かで繊細なパーカッション音楽」と表現したことがあります。
*『ゼルヴラ』ライス HMR-5013

パーカッション音楽のマロヤに、あえて「繊細」という形容詞を付けたのは、
当時絶賛されていたコノノへのあてこすりでした。
コノノのうわっつらの<音の衝撃>ばかりがもてはやされ、
かなりアフリカ音楽を聴き込んでいるようなファンですら、
パーカッションのみを伴奏に歌うマロヤのことを、「素朴で単調」などと言うのに反発して、
解説ではかなり皮肉ぽい書き方をしたおぼえがあります。

コノノのわかりやすい<爆音グルーヴ>には飛びつけても、
パーカッション・アンサンブルが織り成す複雑なリズムや、
ポリリズムの面白さに気付けないというのは、
要はアフリカ音楽の魅力がわかってないってこと。
そんな批判を書き連ねた一文だったわけなんですが、
最近ではジェンベやンビーラを演奏する人も増え、
パーカッション音楽の繊細なニュアンスやグルーヴが
かなり理解されるようになったんじゃないのかなあ。

そうは言っても、今回の選曲にあたっては、
伝統マロヤばかり何曲かけても飽きられそうだから、
1曲だけにするかななどと、最初は考えていたのでした(←弱気)。
そこで、グランムン・レレ、ダニエル・ワロ、
サルム・トラディシオンを選曲してみたんですが、
軽妙なレレ、重厚なワロ、フレッシュなサルムと、三者三様でとても1曲に絞れず、
結局3曲ともかけることにしました。

なかでもサルム・トラディシオンのみずみずしさは、飛び抜けてましたね。
シャーマンの民間信仰や奴隷文化のくびきから解き放たれた
若き世代のレユニオン人のアイデンティティを高らかに表現していて、
聴いているだけで、背筋がぴんと伸びるかのような思いがしたものです。

今回選んだサルム・トラディシオンの曲は、ぼくが彼らの最高傑作とみなしている、
レユニオンのインディからリリースされた、01年のデビュー作のライヴ盤の中の1曲です。
本作のあと、彼らはフランスのインディゴに移籍して、
スタジオ録音の傑作“KRIE” “FANM” の2作を出して解散してしまいましたが、
デビュー作のエネルギッシュなライヴ演奏は、そのスタジオ録音さえも凌いでいました。

このローカル・リリースのデビュー作はほとんど出回らず、
日本に入ってきていないので、聴いたことのある人は皆無かも。
楽しみにしていてくださいね~♪
もちろん伝統マロヤばかりでなく、
ノスタルジックな南国歌謡のセガから最新のマロヤ・ジャズまで、
レユニオン音楽の歴史を振り返ります。放送は8月29日木曜日23時からです。

Salem Tradition "WALIWA" Les Escales LEM0104 (2001)
Salem Tradition "KRIE" Cobalt 09358-2 (2003)
Salem Tradition "FANM" Cobalt CD100 (2005)
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