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みずみずしさ溢れる伝統ファド ジョアナ・アメンドエイラ [南ヨーロッパ]

Joana Amendoeira  AMOR MAIS PERFEITO.JPG

そのうち日本でもライスから解説付きで出るからと待っていた、
マイ・フェバリット・ファド・シンガー、ジョアナ・アメンドエイラの去年秋に出た新作。
いつまで経ってもリリースされる気配がないので、しびれを切らしてポルトガルにオーダー。

ジョアナの10年の前作“SETIMO FADO” は、ピアノやアコーディオンを加え、
新世代ファドとしての試みを凝らした作品となっていましたけれど、
ジョアナの良さはなんといっても、伝統ファドにしっかりと軸足を置いているところ。
新世代の試みといっても、伝統ファドから大きく離れて、
ポップスに色気を出すようなことは、この人に限ってはありません。
アマリア・ロドリゲス亡き後の伝統ファドの継承者であることを、
ジョアナははっきり自覚しています。

新作は副題にあるとおり、ジョゼー・フォンテス・ローシャのトリビュート集。
新機軸はいったんお休みで、伝統ファドに回帰した作品となっています。
ギターラ(ポルトガル・ギター)奏者で作曲家のジョゼー・フォンテス・ローシャは、
ラウール・ネリの後をついでアマリア・ロドリゲスの伴奏を務めた人。
名作“COM QUE VOZ” でギターラを弾いたのもこのフォンテス・ローシャで、
当時はモダン派と呼ばれたものでした。

そんなモダンな作風を持ったフォンテス・ローシャの曲集といっても、
こうして今聴くと、古風なメロディをたたえた伝統ファドの味わいを強く感じます。
フォンテス・ローシャは、ジョアナの05年ライヴ作“AO VIVO EM LISBOA” に
特別ゲストとして参加したことがあり、フォンテス・ローシャの曲2曲での共演は、
あのライヴのハイライトとなっていましたね。

そんな縁もあって、11年に亡くなったフォンテス・ローシャを追悼する思いで、
ジョアナはこの企画に臨んだんじゃないでしょうか。
ジョアナの歌いぶりはますます円熟味を増していて、
いまや大歌手としての風格すら感じさせるようになっています。
その一方で、みずみずしさを失わないのもこの人のよさ。
口の中で柔らかに膨らむ発声が、無理なくファドのダイナミクスを表現していて、
1曲目の歌い出しからホレボレとしてしまいました。

伝統ファドの歌い手として、新しい試みに取り組みながらも、
時にはオーセンティックな伝統ファドに立ち戻りながら、
一歩一歩前進しているジョアナ・アメンドエイラ。
その確かな足どりは、間違いなくファド新世代の先頭を歩んでいます。

Joana Amendoeira "AMOR MAIS PERFEITO : TRIBUTO A JOSÉ FONTES ROCHA” CNM CNM419CD (2012)
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