ジャズ・ショーロの再現 レオ・ガンデルマン [ブラジル]
いまどきジャズ・ショーロとは珍しいですねえ。
MPBからジャズ、クラシックまでなんでもござれのサックス奏者、
レオ・ガンデルマンの新作なんですけど、この企画の発案者は、
アレンジとカヴァキーニョ、テナー・ギター、ギターを担当したエンリッキ・カゼスでしょうね。
今日びジャズ・ショーロなんてアイディアを思いつく音楽家は、エンリッキしかいませんって。
アルバムは、サックスによるショーロ演奏の定番曲「サキソフォンよ、なぜ泣くの?」からスタートし、
ショーロの超難曲として有名な「ショリーニョ・ダ・トゥーラ」へと続きます。
そしてルイス・アメリカーノ、カシンビーニョ、ラチーニョといったサックス奏者のショーロ・ナンバーに、
モアシール・サントス作のボサ・ノーヴァやサンバのほか、
アルバム・ラストは、フレーヴォの本場レシーフェで現在最高のオーケストラを率いる
サックス奏者スポックを迎え、華やかなフレーヴォで幕を閉じます。
レオのヴァーサタイルなサックスの実力を生かしながら、
ジャズ・ショーロを現代に甦らせるアイディアに富んだ見事な作品で、
う~ん、さすがはエンリッキとウナってしまいました。
ジャズ・ショーロが一番面白かったのは、
ラダメース・ニャターリやガロートたちがショーロのモダン化を試みていた40~50年代です。
ジャズ・ショーロは、アメリカのスウィング・ジャズを取り入れた30年代の頃に生まれましたが、
当時はまだ外国の流行を取り入れた軽いお遊びのようなもので、
本格的な音楽的実験が図られたのは、大戦前後のこと。
ボサ・ノーヴァのハーモニーを10年先取りした天才ミュージシャン、
ガロートによるジャズ・ショーロは、先進的なサウンドを生み出していました。
そんな当時のジャズ・ショーロの真髄は、
なんといってもダンス・ミュージックであり、エンタテインメントであったことですね。
北米ジャズのように芸術性を高めて、音楽を小難しくするのではなく、
ジャズ・ショーロの魅力は、親しみやすい娯楽性にありました。
エンリッキがジャズ・ショーロの再現を企てたのは、実はこれが初めてではありません。
エンリッキ率いるノーヴォ・キンテートによる、
ラダメース・ニャターリのキンテート・ノーヴォ時代の作品集
“RADAMÉS GNATTALI 100 ANOS” を06年に出していて、
ぼくはエンリッキがてがけたプロジェクトのなかでも、最高の仕事だったと思っています。
ショーロ・ファンにもあまり顧みられないジャズ・ショーロですけれど、
これを機に注目が集まって、往年のジャズ・ショーロの録音が復刻されないものかと、
密かに待ち望んでおります。
Leo Gandelman "VENTOS DO NORTE" Azul Music AMCD1565 (2013)
Novo Quinteto "RADAMÉS GNATTALI 100 ANOS" Rob Digital RD101 (2006)
2013-09-29 00:00
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