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トーチ・ソングとR&Bにのぞく女らしさ シェレーエ [北アメリカ]

Shelea.JPG

ピアノの上に寝そべる美女が鍵盤と戯れる図という、なかなかにムーディなジャケット。
ジミー・ジャム&テリー・ルイスのプロダクションに所属するコンポーザーとして、
シャンテ・ムーアやヴァネッサ・ウィリアムズへ楽曲提供するほか、
セッション・シンガーとしても活躍してきたシェレーエのデビュー作です。

一聴してメロメロになったのが、シャンテ・ムーアに提供したというタイトル曲で、
現代に蘇るトーチ・ソングとでもいった趣。
しなだれるように歌う色香たっぷりの歌いぶりに、もうトロけるほかありません。
シェレーエが弾くピアノにゴージャスなストリングスがフィーチャーされるサウンドは、
イマドキのR&Bというより、50年代王道のアメリカン・ポピュラー・ソングそのもの。

スティーヴィー・ワンダーのハーモニカをフィーチャーしたのが話題を呼びそうですけど、
この曲の聴きどころは、ラウル・フェルナンドがてがけたストリングス・アレンジの方でしょう。
アルバムには、フックの利いた80年代風のリズム・トラックの曲もありますけれど、
やはりいいのはスロー・ナンバーの方。
ブライアン・マックナイトとデュエットした曲では、幾重にも重なるストリングスに、
ブラシのドラムス、ミュート・トランペットをフィーチャーし、ジャジーな風味が極上です。

印象的だったのは、アルバム・ラストに収められたタイトル曲のR&Bヴァージョン。
トーチ・ソング・ヴァージョンとは、シェレーエの歌い口が明らかに違ってるんですね。
R&Bヴァージョンでは、キリッとした表情で女心を歌っていて、
トーチ・ソング・ヴァージョンのような、しなだれるような色気はありません。

トーチ・ソングの方は、男を意識した、可愛い女を演じる女の媚びを感じさせますけど、
R&Bの方は、女性リスナーの共感を呼びそうな、
自立した女性がふと見せる、女の弱さみたいなニュアンスの違いを感じます。
トーチ・ソング全盛の半世紀前と現在との、女性の意識の変化を表しているような。
どっちがお好み?なんてヤボな質問はしないでね。

Sheléa "LOVE FELL ON ME" Breath Of Life BOLR20130202 (2013)
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