アンニュイなジャズ・スタイリスト グレッチェン・パーラト [北アメリカ]
アンニュイなムードを持つジャズ・ヴォーカリストさんですね。
サウンドがやたらと洒落ていて、カフェ・ミュージックのファンにウケそう。
シャーデーが好きな人とかにもアピールするのでは。
ピアノ・トリオをバックに聞かせる、オーソドックスなジャズ・ヴォーカルながら、
アクースティックとエレクトリック両刀使いのピアノがすごくいいセンスで、
付属のDVDを観たら、左手でアクースティック、
右手でサウンドボードの上に置いたキーボードを弾いているんですね。
ジャズ・ヴォーカリストなんて古めかしい言い方がそぐわない、
現代的なソング・スタイリストともいえる、フレッシュな才能の持ち主です。
アンニュイいっても、ムードだけで聞かせるような人ではなく、
04年のセロニアス・モンク・ヴォーカル・コンペティションで優勝したという経歴は、
ダテじゃありません。レパートリーにハービー・ハンコックの“Butterfly” や
ウェイン・ショーターの“Juju” を取り上げているほか、ローリン・ヒルの“All That I Can Say” に、
面白いところではパウリーニョ・ダ・ヴィオラの“Alô Alô” を歌っています。
スキャットを多用して、器楽的なヴォーカルを聞かせる人って、
滑舌よく、ディクション明快、キレッキレの才気あふれるって感じの人が多いのに、
この人はけだるく囁くように歌い、体温低そうな歌いぶりがなんともユニーク。
手拍子でリズムを取りながら歌い始める“Butterfly” は、
ふわふわと浮遊するグレッチェンの歌いぶりが楽想にぴたりとハマっていて、
最高のヴォーカル・ヴァージョンに仕上がっています。
パウリーニョのサンバでは、マウス・パーカッションでクイーカを真似る芸を披露。
上がり下がりの激しいメロディを正確なピッチで歌う技量も鮮やかで、
あくまでも軽~く歌いながら、さりげなく高度なテクニックを披露していて、唸らされます。
夜のしじまに流れる霧のようなグレッチェンの歌を、
バックからもりたてるケンドリック・スコットのドラムスにも耳を奪われます。
ピシッピシッと要所をきめながら、安定感のあるドラミングがさすがですねえ。
引き出しも豊かで、実によく歌うドラムスです。できれば全曲彼に叩いてほしかったなあ。
グレッチェンはすでに何度か来日しているようで、今度来たらぜひ観に行かなきゃ。
その時はケンドリック・スコットを連れてきてね。
[CD+DVD] Gretchen Parlato "LIVE IN NYC" Obliq Sound OSDCD114 (2013)
2013-11-06 00:00
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