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芸術性よりユーモアを アミルトン・ジ・オランダ [ブラジル]

Stefano Bollani  Hamilton De Holanda.jpg

いまやブラジルの器楽奏者を代表する活躍ぶりの、天才バンドリン奏者アミルトン・ジ・オランダ。
ソロにデュオにトリオにクインテットにと、リリースするアルバムも大量で、
ファンを自認するぼくも、すべてをフォローするのは正直大変です。

ぼくにとってのアミルトンのベスト作は、キンテート名義の“BRASILIANOS 2”(08)。
コンテンポラリー・ジャズにひけをとらない音楽性を発揮しながら、
ショーロの歌心に溢れたインタープレイが、アミルトンにしかなし得ない個性となっていました。
あのアルバムがあまりにもスゴすぎて、以降アミルトンのアルバムで、
これを超えるアルバムとはまだ出会えていません。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-04-22

キンテートでの“BRASILIANOS 3”も期待外れで、
なによりミルトン・ナシメントなんてゲストが余計でした。
最近リリースされたピシンギーニャ集も、チューチョ・バルデースだのオマール・ソーサだの、
あげくのはてはウィントン・マルサリスまでとコラボしたりして、
ビッグ・ネームとの共演は、自分の名声を高める欲目なのかと疑りたくなりますね。
それにしてもよくもまあ、ぼくの大嫌いな音楽家ばかり並んだもんだよ、まったく(ぶつぶつ)。
もっと自分の音楽性にふさわしい共演者を選んでほしいですね。

まあ、その意味ではアンドレ・メーマリとの共演した、
エグベルト・ジスモンチとエルメート・パルコアルの作品集は、
意義のあるコラボとはいえるんでしょうけど、
ぼくにはあのアルバムはあまりに芸術的すぎて、好みじゃないんですよねえ。
その後に出た、ジャケットが『アンダーカレント』風なトリオのアルバムも、
あんまりぱっとしなかったしなあ。

というわけで、次から次へとアミルトンのアルバムはリリースされるものの、
なかなかこれは!というものに出会えなかったんでした。
ところが、この春に出たイタリアのジャズ・ピアニスト、
ステーファノ・ボッラーニとのライヴ・デュオが予想外に良くって、嬉しくなっちゃいました。
レーベルがECMだっていうんで、
また過度に芸術的なんじゃないかと警戒して聞かずにいたんですが、そうじゃなかったですね。

このアルバムの良さは、二人のプレイにユーモアがあること。
ステーファノ・ボッラーニがわざとシロウトぽくカンツォーネを歌ったりする曲があるんですけど、
通俗なカンツォーネを皮肉ぽく演じているようで、その批評性に思わず膝を打ちました。
こういうユーモア・センス、好みだなあ。
ラストにエルネスト・ナザレーの“Apanhei-Te Cavaquinho” を取り上げて、
ここぞとばかり二人が速弾きを披露するところも、しゃかりきに弾いているというより、
ユーモアがあふれていて、この曲の持つ娯楽性をよく引き出していました。

もちろんユーモアばかりでなく、二人が同時即興する曲では、
手に汗握るインタープレイを楽しめ、存分に二人の技量を発揮しています。
ショーロのエンタメ性を重視したいぼくには、芸術性よりユーモアを発揮した、
こんなアミルトンが好きなのです。

Stefano Bollani, Hamilton De Holanda "O QUE SERÁ" ECM 2332 (2013)
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