ザンカー一筋 ドーン・ダオ

そういえば去年も、暮れゆく年にヴェトナムの抒情歌謡をずいぶん聴いていたんだっけ。
今年の暮れは、ヴェトナム南部アンザン省出身のヴェテラン歌手ドーン・ダオの新作が届きました。

20年以上のキャリアを持つドーン・ダオは、
流行の音楽に色目を使うこともなく、ザンカー一筋で歌い続けている一人。
現在はボンセン歌舞楽団に所属しているそうです。
９作目となる新作でも安定感のあるところを聞かせていて、さすがです。
得意の泣き節でも、しつこくなく、あっさりもしすぎず、いい按配の歌いぶりに熟練を感じさせます。

　　　

これまでも４作目にあたる“DẤU CHÂN KỶ NIỆM” や、
６作目の“TIẾNG LÒNG” でこの人の歌に親しんできましたが、
いずれのアルバムも、ドーン・ダオの歌唱力はまったく申し分がありません。

不満といえば、あまりにコンサヴァな歌謡調アレンジの方。
凡庸なドラム・ブレイクに、「うわぁ、ダサい」と思わず声を上げたりして。
歌がいいだけに、なんとも惜しいなあと悔やまれるところなんですけど、
今作はそんな面もだいぶ改善され、興をそがれる場面も少なくなりました。
まだシンセの音色などに不満がないわけじゃないんですけど、まずはオッケーでしょう。

しっとりとした田舎情緒に浸れるドーン・ダオのザンカーは、
ヴェトナム庶民の心のふるさとといった風情に溢れています。
その歌に身を任せていると、温泉にでも浸かっているような気分で、
気ぜわしい師走にはやる心も、ゆるりゆるりと落ち着いていきます。

Đông Đào "THƯƠNG CA MÙA HẠ" Viết Tân Studio no number (2013)
Đông Đào "DẤU CHÂN KỶ NIỆM" Saigon Vafaco no number (2007)
Đông Đào "TIẾNG LÒNG" Saigon Vafaco no number (2009)