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ルイス・ゴンザーガが創作した北東部音楽のパノラマ ソコーロ・リラ [ブラジル]

Socorro Lira e Oswaldinho Do Acordeon.jpg

ルイス・ゴンザーガ生誕100周年を迎えた2012年は、
ブラジルでトリビュート・アルバムが山ほどリリースされてましたけど、
ぶっちゃけ、どれも生誕記念の便乗作ばかりでした。
まあ、いつものブラジルらしいビジネスと言えばそれまでなんですけど、
ブラジル音楽史に大きな足跡を残したルイス・ゴンザーガの音楽と
真正面から向き合った企画作が1枚も作られないのは、ずいぶんとさびしい話。

なあんて思ってたら、ちゃんと出ていたんですね。
生誕100周年にはちょっと間に合いませんでしたが、それを補ってあまりある意欲作が。
北東部音楽の伝統に根差した音楽をやる、パライーバ出身の女性シンガー・ソングライター、
ソコーロ・リラの9作目を数えるアルバムです。
ソコーロ・リラといえば、ゼー・ド・ノルチ生誕100周年でも、素晴らしいアルバムを作ったばかり。
ゼー・ド・ノルチは、バイオーンを世界的に広めた1953年の映画『カンガセイロ』で歌われた
“Mulher Rendeira” の作者ですけれど、今度のテーマはルイス・ゴンザーガということで、
選曲にもいっそう力が入ったようです。

Socorro Lira  LUA BONITA - ZÉ DO NORTE 100 ANOS.jpg

レパートリーに選ばれた14曲は、すべて40~50年代の曲。
まさにゴンザーガの黄金期の曲ばかりなんですが、
「アザ・ブランカ」のような有名曲が1曲も入ってないのがミソというか、
そんじょそこらの便乗作と違うところ。
選曲の肝はすべて形式が違うことで、1曲目から順に追ってみると、
バイオーン、カリンボー、マシーシ、ショーロ、ファド・バイオーン、ココ、マラカトゥ、
アボイオ、ヴァルサ、サンバ、マズルカ、シャシャード、カランゴ、ポルカと並んでいます。

正直ぼくも初めて知った曲が多くて、ポルトガルのファドとバイオーンをミックスした
“Ai, Ai Porugal” なんて曲を作っていたのには、驚かされました。
粘っこいリズムを聞かせるマシーシの“Bamboleado” も珍しければ、
牛飼いが牛を呼ぶために歌うアボイオを取り入れた曲を作っているところは、
北東部の風俗を巧みに取り入れたゴンザーガならではといえます。
こうした多彩な北東部音楽のパノラマを創り出したゴンザーガの魅力を、
この選曲は鮮やかに浮き彫りにしていて、ソコーロ・リラの慧眼に恐れ入るばかりです。

そんな秀逸なレパートリーを、ソコーロ・リラは女性コーラスや
ゲストに迎えた歌手とともに楽しげに歌っています。
ガリシア人歌手のウシーアまで参加していたのは意外でした。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-02-19

本作の共同名義となっているヴェテラン・アコーディオン奏者
オズヴァルジーニョをはじめとする伴奏陣も、
電気を使わない生音楽器の編成で、昔懐かしいほっこりとした北東部音楽を繰り広げています。
やっぱり伝統的な北東部音楽には、エレキ・ベースやキーボードはいりませんよね。
田舎ぽさを失わない、温かみのあるこういうサウンドが一番です。
ルイス・ゴンザーガも天国で、きっと満面の笑みを浮かべているに違いありません。

[参照] http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-12-13

Socorro Lira e Oswaldinho Do Acordeon "O SAMBA DO REI DO BAIÃO" Genesis Music AR0123 (2013)
Socorro Lira "LUA BONITA : ZÉ DO NORTE 100 ANOS" Tratore SLMMPB04 (2010)
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